【お知らせ】こちらのカテゴリーについて追記です

こんちわ、ケシでっす。

『初恋10のお題』

このカテゴリーのお題は途中で更新が止まってしまっていまして、
当初の予定ではお題のナンバリングに合わせて、
カオリンとりょうちゃんの進捗度も進めて書いていこうかなと思っていたのですが・・・

数年間、放置することによって見えてくることもありまして(笑)
お題を何度も何度もじっくり読んでいると、
これはどうも初期から中期にかけてのモヤモヤ期を書くための、
お題な気がしてしょうがなくなってきました。
なので、そういうコンセプトで書いていくための、
お題リストってことにしようと私の中で決めました。
ま、どうでもいいお知らせかもしれませんが、
少しづつ書き進める気になってきたと受け止めて下されば幸いです。

ここ2~3ヶ月の当ブログの動きでもお分かり頂けると思いますが、
少しづつ中途半端だったお話の続きを書き進めて完結させたりと、
今まで忙しさにかまけて放置気味だった二次創作のほうも、
今出来るペースでやっていきたい気持ちになっています。
とはいえ、以前のように毎日更新をやれる生活ではなくなってしまったので、
ゆっくり更新になるとは思いますがまたボチボチ書いていきたいと思います。
それでも期待せずに待ってるぜ、というお方がいらっしゃれば大変嬉しいです。
(私が犬だったら嬉ションして庭駆け回る勢いで嬉しいです。)

それでは、またその内に~~~ヽ(´∀`)ノ
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[ 2021/07/14 03:40 ] 初恋10のお題 | TB(0) | CM(0)

4.戸惑い微熱

自分自身のことなのにわからないことが沢山あると、槇村香はここ最近気が付いた。
20歳もとうに過ぎ、漸く自覚しつつある初恋が、多分世間一般的にみれば、
随分スロースターターであるらしいことも何となくはわかっている。
特に理由はない。10代の頃、周囲の友人たちが恋愛絡みで一喜一憂している姿を、
ぼんやりと眺めてはいたけれど、それはどこか他人事だったし興味はあまり無かった。
友達としての好きと、恋愛対象としての好きの違いもよくわからなかった。




『香さんって、わかり易いよね。』

そう言いながらニッコリと微笑んだのは、香より少し歳上の(でも撩よりも歳下の)
イケメンの依頼人だった。
自分でも自分のことがよくわからないのに、
大して知りもしない他人には『わかり易い』らしい。
依頼の間の数週間、なにかと一緒に過ごすことの多かった依頼人に、香は何度か口説かれた。
普段は鈍感で、然り気無いアプローチ程度では天然でスルーしてしまう香でも、
流石に理解できるくらい直球で彼は香を口説いた。
曰く、彼の人生の中でも決して逃してはならない運命的な出逢いだと、
初対面の時にそう思ったらしい。


『でも香さんって気持ちが全部、表情(かお)に出るから誰のことを考えてるのかバレバレだもん。』

『ホラ、また。そんなに真っ赤な顔してたら、図星だって言ってるのと同じだよ。』


撩のことを好きだと思う香の気持ちは、傍からみてとてもわかり易いらしい。
仕事の性質上(それだけでもないけれど)、香は出来るだけ自分の気持ちがバレないように、
心に秘めているつもりだったのに、そんなにわかり易いのなら当の撩本人にバレていたらどうしようと、依頼を終えてから数日経過して、ふと心配になったのだ。

仕事の為とはいえ同じ屋根の下で暮らす撩とは、
人生の経験値から、考え方から、行動パターンから、何から何まで全く異なる相手過ぎて、
香にとって撩は未だ未知の領域だ。到底、香の太刀打ち出来る相手ではないので、
気持ちを告げるなど絶対に無理だし、絶対に嫌だ。
そもそもスケベで意地悪でぐうたらな撩なんか、ムカつくことのほうが多いのに。
何故だか香の心の中のずっと奥の奥のほうで、
「でも好き」っていう小さな感情の塊が、香を頑なに支配するのだ。

撩は香が夕食を作っていても、そのまま帰らずに飲みに行ったりする。
香にだけは口が裂けても言わない甘い言葉を、
その辺を歩いている女の人や美人の依頼人には惜しげもなく大安売りしたりする。
そのくせ香には、口を開けば憎まれ口のオンパレードだったりする。
正直、香にしてみれば納得はいかない。
それは自分が日頃やっていることに対してのレスポンスとしては、
とても酷い仕打ちのように感じるけれど、別に誰に強いられている訳でもなく、
香は香自身の意思で撩のそばに居ることを選んでいるので、仕方ない。自己責任だと香は思う。
だからいっそ、好きも嫌いもなく、それこそ友達と恋の違いがわからなかったあの頃に戻れたら、
どんなにか楽だろうと香は思うのだけど、戻り方はわからない。
撩のバカ(でも好き)、撩の意地悪(でも好き)、撩なんて大嫌い(でも好き)。
「でも好き」の力は絶大だ。
完全に香の心を縛り付けて、前にも後にも進めない。雁字搦めだ。



この数日、相棒は何やら思い悩んでいるらしいと、冴羽撩は感じている。
少しだけ機嫌がよろしくないことは、言葉は無くとも肌感覚で察知している。
恐らく不機嫌の始まりは、先日の男の依頼人からの仕事を請けた辺りだったような気がする。
依頼料も入って財政事情は悪くないのに、香の表情は晴れないし、
自分への当たりも普段よりキツいと感じるのは撩の気のせいでは無い筈だ。
直接的に苦情を言われる訳でもないし、自分の為に用意された食事も日常の些細な色んなことも、
至っていつも通りだけれど、時折、視線や言葉の端々に棘を感じる。飯はいつも通り、旨い。
(因みに、この日々の食事に対する撩の感想は、言葉になって香に伝えられることは決してない。)





ちょっと訊きたいことがあるんだけど。



香がこう切り出した時、
撩はちょうどキャベツと油揚げの味噌汁をひとくち口に含んだところだった。
ゴクリと嚥下した撩の喉仏が上下するのを見ながら、香は頬が火照るのを感じたけれど、
たった今、訊こうとしていることを思って気を引き締めた。



何?

···アタシって、わかり易い?

何が?

だから···その、考えてることとか···



そう言った香の目が激しく泳ぐ。
茶色の癖毛から覗く耳朶の先が真っ赤で、今しがたの当人の質問の答えを如実に表している。
ああ、そのことか。と、撩は思う。あの依頼人は胸糞悪い男だった。
表立ってそれに意見する立場に撩は無いので、敢えて静観の構えをとってはいたが、
チャラチャラと香を口説くその男に、撩は内心ムカついていた。
香は撩に気付かれていないと思っているけれど、
撩は香と依頼人のやり取りはきちんと観察し、概ね把握している。
これだから男の依頼人は嫌なのだと、撩は思う。
逼迫した冴羽商事の財政事情を盾に、半ば無理矢理に香によって請けさせられた依頼だったけど、
結果として香はここ数日、色々と思い悩むこととなったらしい。



んなもん、バレバレだろ。

···。



嘘を吐いても仕方が無いので正直に答えた撩を、香は恨めしげに無言で見詰めている。
その無意識の表情は、反則だろうと撩は思う。
薄らと涙を湛えた丸い瞳と染まった頬、眉根を寄せてきつく結ばれた朱い唇。
撩の体温が、0·3℃ほど上昇する。脈が若干、速くなる。
取り敢えず心の安定を図る為、撩は平静を装ってもうひとくち味噌汁を啜る。
やっぱり旨い、出汁が効いている。



ま、でも言わなきゃ無いのとおんなじだ。



撩がニヤリと笑った。わかっている。撩は香の気持ちは知っている。そして自分自身のことも。
二人がこうして共に暮らしていくためには、
互いの感情は秘めたままでいるほうがなにかと都合が良いと思うから。だから言葉にはしない。
言葉は人を縛る枷になる。言葉は難しい。
想いの全てを端的に的確に表すことなど、撩には出来そうにないから、はじめから言わない。
撩は常に、そのスタンスだ。



別に何もかもオープンにする必要も無いだろ。大切なことは自分がわかってりゃ良いんだよ。



確かにその撩の答えは、秘密主義の彼らしいものだと香は思う。
普段は大嫌いな撩の秘密主義だけど、香はその言葉に救われた気がした。
香がどんなに撩を好きでいても、心に秘めて大切にしているだけならば誰にも迷惑は掛けないし、
心は自由だ。
傍からみれば、撩と香の関係は変なのかもしれない。
香の心は他人には丸見えで、わかり易くて馬鹿なのかもしれない。
それでもこの世で一番香の恋心をそっとして放っておいて欲しい当人が、
こうして香の秘密に触れないでいてくれることは、香にとっては有り難いことだ。
もっとも、撩には撩で探られたくない色々があってお互い様ってことかもしれないけれど、
とにかく何であろうと、何事もなく平穏にこの日常を営む為の利害は一致したので、
それで良いと香も納得することにした。

槇村香には、まだまだ沢山わからないことがある。
一番近くにいて生活を共にする男の本心など、
全く気付かずに生きているけれどそれで何の問題もない。




「りょおの秘密主義者め(でも好き)」

「お前がわかり易過ぎるんだよ(可愛いなチクショー)」

「アンタが嘘つきなだけよ(でも好き)」

「お前が単純なんだよ(上目遣いやめれ)」

「アンタが複雑過ぎるのよ(でも好き)」





「ま、でも、それがお前の良さでもあるんじゃねぇの?」
「何よ、急に。調子狂うじゃん。」



香の抗議の声は聞こえない振りをして、撩は肩を竦めるとご飯を口一杯に頬張った。
撩はスケベで意地悪で、労働意欲に欠けるのに遊んでばっかりで大嫌い。でも大好き。

これは恋だ。
香は現在進行形で、全く手応えの無い恋をしている。
友達の好きと恋の好きの違いがわからなかった香には、まだまだ恋の方程式は解けそうにない。


[ 2021/07/15 00:55 ] 初恋10のお題 | TB(0) | CM(1)