ss 深爪

連載とは繋がりのない、短いお話を書きました。気まぐれ更新。





・・・深爪に似てるかも、しれない。




どんな風に?と、撩が訊ねたから、香はそう答えた。

指先って普段、無意識に使ってるじゃない?だから、深爪しちゃうと地味に痛いってゆうか。
その時になって何となく感じるというか、鈍い痛さだからその内麻痺しちゃうってゆうか。
痛みに慣れてきた頃には爪も伸びて平気になるってゆうか。

香の説明によれば、撩の冷たさはそういう種類の冷たさらしい。
些細なことから香が撩に、アンタはアタシには冷たいから、と言ったのが撩には俄然引っ掛かった。
いやいやいや、俺は優しいだろう?おまえには。と、心の中で反論したけれど、言葉にはしない。
自分だけが未だ夕食中で、香はとうに食事を終え洗い物をしながら、撩に背中を向けている。
もどかしい。
自分の考えていることと、相棒の考えていることとの隔たりが著しくもどかしい。
だからやめときゃいいのに、どんな風に?なんて訊いて、傷口を抉るような真似をしてしまった。
しかも、香はそんな話を、どこか楽しげにも聞こえる口振りで説明するから、尚のこと憎らしい。
きっと見えないその口元には、薄く笑みさえ湛えていそうで、撩は軽く傷付いた。






『冴羽さんて、やさしそうに見せて、ほんとは全然優しくないのね。』


そう言ったのは、数ヶ月前に依頼人だった女だ。
依頼を終えても尚、撩に気のある素振りを見せてきてなんだかんだで円満に終わりそうな兆しが見えなかったので、
一度だけ惰性で寝た。ただそれだけだ。
安いラブホテルのけばけばしい壁のクロスを睨みながら、女はそう言った。
当たり前だ、優しくするつもりなんて、端から無いのだから。
撩という人間とまともに対峙しようと思ったら、多分、人生の破滅も覚悟して貰わないといけない。
きっとそういうひと達は、撩が違う世界に生きる人間だという認識が持てないのだろう。
撩だってそうやって無駄に他人を傷付けたくは無いけれど、言葉にしないで解って貰うにはそれが一番手っ取り早い。
撩は今まで何度もそうやって、他人と深く関わることを絶ってきた。
肉体関係が永遠の断絶を意味し、孤独を深めるのだなんて、きっと天真爛漫な撩の相棒には理解不能だろう。




物思いに耽る撩の鼻先に、コーヒーが薫る。
いつの間にか香は洗い物を終え、コーヒーを淹れたらしい。
4杯目の白米を食べた所で、炊飯器の中身が無くなったので、香のジャッジで今晩の食事は強制終了だ。
湯気を立てるマグカップと引き換えに、テーブルに並んだ食器が引かれていく。



何ボーっとしてんの?熱いから火傷するよ?



そう言って香は薄く笑った。
香は解っていない。こうして一緒にいるという現実が既に、香が特別である証しだというのに。
香にだけはどうしても冷酷になれない、撩の弱さを香は知らない。





ったく、解ってねぇな。リョウちゃんほど優しい男はそういないぜ?



撩が茶化してそう言うと、香は肩を竦めた。
どうせ冗談を言っていると思っているんだろう、真剣に取り合っては貰えない。
もっともそう思わせるには、撩の方にも原因が無くも無いので仕方ない。



ま、そうかもね。アタシ以外、特に美人の依頼人とかには優しいもんね、アンタ。



ホラ、また解ってない。と、撩は心の中で呟いた。
熱いブラックコーヒーを啜りながら、撩は思わず指先を確認した。
深爪はしていない、地味に痛いのは切ない男心だったりするのかもしれない。
もどかしい痛みはそれでも、平和な日常に埋もれて麻痺していずれ癒えてゆく。






ドMカップルの話です。
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[ 2018/07/17 23:43 ] 短いお話 | TB(0) | CM(0)

ブライスさんでカオリンごっこをしました。

おはこんばんちわ、ケシでっす。

いやぁ、暑いっすねぇ毎日毎日。皆さんいかがお過ごしでございましょうか?
熱中症などになりませぬよう、睡眠と水分塩分をしっかりと召しませよ。

今日はタイトルの通り、誰得なのか全くわからない遊びをしたのでついでに写真を撮りました。
因みに数年前、リョウちゃんごっこはシルバニアのミルクウサギさんで実践してますので、
興味のある方は当ブログ内で探して見てちょ。
この記事と同じカテゴリー内にありますYO


写真がありますので、折り畳んでおきますね(*´∀`*)

[ 2018/07/27 12:34 ] クローゼット | TB(0) | CM(1)