れーか問題。

おはこんばんちわ、ケシでっす。

ここ数日、モヤモヤとした断片が脳裏を掠めておるのですが、もう少ししたらハッキリとした形になりそうな気がします。
新しいお話の題材です。
カオリンと麗香さんのライバル模様と、周囲の面々とのあれこれを書けたらな。と思います。
これまで当ブログでは、麗香さんがリョウちゃんを諦める時の経緯ってあんまり踏み込んでこなくって、
どちらかというと麗香さんがとっても物分かりが良いか、もしくは少し性悪チックかって感じになってて、
どうしてもそんな風に描いてしまいがちでワンパターンだったので、
この辺をもう少し掘り下げる事が出来たら面白いかな?と思ったわけです。

でも、まだモヤモヤ。
もう少しクリアになったら、書き始めようかと思います。
でもさ、最終的にはカオリンとリョウちゃんはくっ付くわけなので、麗香さんは失恋すんだけどさ。
そして、麗香さんが身を引くわけだからどうしたって、物分かり良く成らざるを得ないわなぁ。
最後の彼女の足掻き方をじっくり考えたいというか、何ていうか・・・
その結果、カオリンとリョウちゃんの絆が深まるっていう話が書けたら良いなと思います(予定)
仕事の合間に考えてます。
ではまた。


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[ 2017/09/20 03:28 ] 未分類 | TB(0) | CM(2)

№1 デートの予定?

「これ、良かったらふたりでどうぞ。」




美樹はそう言って、にっこりと微笑みながら香にその封筒を手渡した。
香の左隣には相棒であるもっこり男が不貞腐れたように珈琲を啜っている。
つい先程、街中での破廉恥なナンパ行為を相方に見咎められて、
手酷い折檻を受けた後、ここに半ば強制的に同伴を求められたのだ。
喫茶キャッツ·アイはいつも通り、閑古鳥が啼いておりママの美樹だけがカウンターの中に静かに佇んでいた。
海坊主は不在で、その理由を美樹が適当に濁したので恐らくは本業の方なのだろうと、撩と香もそれ以上はあえて触れることもない。


???


言葉にはせずとも香は、なぁに?これ、といった感じで首を傾げながらその封筒を開けた。
そこには2枚のチケットが入っていた。
どうやら、有名ホテルの三ツ星フレンチのフルコースディナーを食べさせる、というお食事券らしい。
恐らくは値段にすれば、結構高価な代物だ。



「どうして?」

「頂き物なんだけどね、私たちはちょっと行けそうになくって。無駄にするのも何だしね。」

「で、でも。こんな高価なもの頂けないわ。」

「いーの、いーの。結局、行けなくて無駄になるんだったらもっと勿体無いでしょ?」

「ぅう、それはそうだけど···。」




遠慮が先立ってなかなか美樹の好意に甘えることが出来ないでいる香が、躊躇っていると、
それまで興味無さげにふたりの様子を見ていた撩が、茶化した口調で割って入った。



「美樹ちゃんとふたりでデートすんなら、嬉しいのになぁりょうちゃん。むふ。」

「はぁ?アンタそればっか、大概にしなさいよっっ。美樹さんは人妻なんですからね。それも、新婚さんっっ」


般若のような形相で、ふざける撩の顔面めがけて小さな(それでも重量は1tだ)ハンマーを投げ付ける香と、
それを解っていながらしょうもない戯れ言を繰り返す撩を見ながら、美樹は重たい溜め息を溢す。
どうしても彼らは、素直にはなれないらしい。
美樹が結婚式の時の怪我から喫茶店に復帰してからももう半年以上が過ぎ、もう夏も終わろうかというのに。
撩と香の間には何の進展も見られないし、ふたりを纏う雰囲気にも一切男女の機微を匂わすようなものは感じられない。
奥多摩での、派手な攻防のあとに結構良い感じになりかけたらしいという情報は得ているというのに。
美樹は何も変わらない彼らに、やきもきしている。
夫に言わせれば、それは大きなお世話ということらしいけれど、良い歳をした好き合った男女が何年も一緒にいて、
正直、焦れったいというのが美樹の想いだ。
だからこれは、お膳立ての意味も多分に含んだプレゼント、という訳だったのにふたりは終始この調子なので、
盛大な溜め息も吐きたくなるというものだ。



「でもま、しゃーねーか。旨いもん喰えるんなら、たまには相棒同士で出掛けるのも悪くねぇな。」


香の手から、食事券をスッと奪い取った撩がぬけぬけとそんなことを抜かすので。
撩の髪の毛を掴みながら、香の説教タイムが始まった。
勿論、撩も香のほっぺを摘まみながら応戦している。


「ハンタねぇ、はんでしょんなに、偉しょうにゃのよっっ、しょこははりがとうごじゃいましゅでしょうがぁ。」

「おまえの方こそ、俺がデートしてやるつってんだから、可愛くありがとうって言いやがれっっ」


以下エンドレスでふたりのじゃれ愛が続いたので、美樹は苦笑しながらも放っておいた。
問題は遠慮がちな彼女の方ではなくて、天の邪鬼な彼の方なのだ。
表面上の言葉のチョイスがどうあれ、彼が行く気になりさえすれば後はどうにでもなる。




∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗




香は姿見の前で、考え込んでいた。
朝からもう何度目かの黙考は、それでも幸せな悩みと言えよう。
数着の服をベッドの上に広げている。
依頼などで必要に迫られるので、仕事柄、ドレスの類いも無いではない。
有難いことに友人に、香を飾り立てるのが趣味のようなデザイナー女性もいたりするので、その辺は困らない。
それでも、今夜は仕事では無いのだ。
キャッツでのやり取りから数日、約束の撩とのデート(?)の日を迎えて香は悩んでいた。
あんまり本気でドレスアップしても、何だか気合い入ってるって思われても癪だし。
でも、立派なホテルの三ツ星レストランなので、常識程度には身嗜みを整える必要もある。
その辺りの微妙なバランスを考えるコーディネイトなど、素人にはハードルが高過ぎるので、悩んでいるのだ。
ただ単に、あの大食い男と夕飯を食べるだけだ、いつもとおんなじだ、と思っても、香はやっぱりどうしてもあの言葉を思い返してしまう。

キャッツで散々ふざけあっている間に、撩の口から漏れた『デート』という言葉。

そのワードが無ければ、あるいはもっと気軽に考えることが出来たかもしれない。
撩は、『そういう』認識で今夜一緒に出掛けるつもりなのだろうか。
香はそう考えると、妙にドキドキしてしまう。
湖の畔で、撩に『愛する者』と言われた時も同じように、ドキドキした。
香は何かが変わることも正直少しだけ期待していたけれど、結局は何も変わらないままふたりは暮らしている。
こうしてたまに、ドキドキしたり、恋い焦がれたり、悲しくなったり、愛しい気持ちが溢れたりもするけれど。
基本的には、いつも通りだ。
きっと撩が何気無く発した言葉のいちいちに、香はいつだって一喜一憂してしまう。




∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗



香が自室で、悶々とその晩の外出についてのあれこれを考えているまさにその時。
当の相方·冴羽撩は、地下の射撃場にいた。
その数分前に、撩の寝室に繋がった電話機にその呼び出しの報せが届いて降りてきたというわけだ。
撩が射撃場に着いたのとほぼ同時に、電話をかけてきた彼女も地下トンネルを潜ってやって来た。



「ごめんね、撩。急に呼び出したりして。」


野上麗香は急に撩を呼び出したわけだが、バッチリと決まったメイクとファッションは何時なんどきでも隙はない。
撩に対して抱いている好意が、依然として衰えてはいないであろうことは撩にも判る。
端から撩にはその気持ちに応える気は無いのだけれど、彼女が諦めるかどうかなどは彼女の問題なので撩にはどうすることも出来ない。
あくまで撩としては、知人としてフラットにニュートラルに接しているつもりだ。


「どうした?何かあったか?」


撩は麗香を観察し、恐らくは何か深刻な案件を抱えているのだろうことを直感的にさとる。
いつもはにこやかな彼女が、電話でも若干緊張気味に言葉を選んでいた。
それが判ったからこそ、撩は電話を受けてすぐに応じたのだ。
今晩の予定が、一瞬だけ撩の脳裏を掠める。
奥手な彼女と天の邪鬼な自分を、なんとかして盛り上げようとしてくれる友人たちはお節介とも言えるお膳立てを仕掛けてくれるけど。
この際だから、乗せられてみても良いか。という心境になりつつあったことは否めない。
このところ緊迫した仕事も特になく、平和に過ごしていた矢先だ。


(平和ボケってか···)


麗香の用件を聴きながら、頭の片隅ではついそんなことを考えてしまう。
何もない平和なひとときと、相棒との何も変わらない毎日。
それは結局、撩にとっては余りある贅沢なことなのかもしれない。
何も変わらないことを、廻りの連中はまるでいけないことの様にふたりをくっ付けたがるけれど。
殺し屋稼業なんていう物騒なふたりには、平和なこと、何も変わらないこと、生きていること、そんなことだけでも幸せなはずだ。
それなのに、贅沢な望みを抱いたりするから。
少しだけ油断し始めると、こうして緊迫した空気が何処からともなく迫ったりしてくるのだ。
それを撩は、己の業だと思っている。
これまで奪ってきた魂の報いは、目には見えなくともこうして等分に我が身にも還ってくるのだと。
香に対して抱いているのは、確実に愛情だ。
とっくにそんなことは自覚している。
それでも、先に進むことを簡単に捉えることは、撩にはどうしても難しい。
望むと望まざるに関わらず、撩には仕事は選べない。
そういう性質の仕事を躊躇わずに受けることは、自分に課せられた宿命だと撩は思っている。
これは責任だ、今まで生かされてきたことへの。



「依頼、受けてくれるかしら?」

「あぁ。」

「ありがとう、助かるわ。」

「だから、麗香。独りで突っ走るんじゃねぇぞ。」

「うん。わかってる。」



正直、撩には麗香の慕情など鬱陶しいの一言に過ぎない。
気のない相手から、一途に想われることほど気の重いことはない。
けれど、撩にしか出来ない仕事なら、撩は私情は挟まないことにしている。




∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗




麗香との打ち合わせを終えて、撩がリビングに戻ると、香は洗濯物を畳んでいた。
量販店で3枚1000円で購入した撩のボクサーパンツを畳む香は、心此処にあらずといった感じでボンヤリしている。
今夜の予定が、香をそうさせているのが撩にはよく解っているので、
この上、また更に香を困惑させるのは忍びないと思うのだけど、それは仕方の無いことだ。




なぁ。

ん?

今からちょっと、出てくるわ。

え?

今日の予定な、悪ぃけど····キャンセルな。




香の表情が一気に曇った。
撩の胸も激しく痛む。
それでも撩の表情から、何かを覚ったらしい彼女は気丈に気持ちを切り替える。



何かあった?

···。

アタシに出来ることは?

すまん、大丈夫だ。

···そう、わかった。




香は、それ以上は詮索しなかった。
次にはもう、微笑んでみせる。




あ~あ、ご馳走食べ損なっちゃった。

すまん。

いーよ、今度撩の奢りでどっか連れてってくれたら、チャラにしてあげる。

しゃーねーなぁ、じゃ牛丼な。

しょっぱいなっっ(笑)




笑ってくれる相棒は、聞き分けが良いと撩は思う。
そして撩は、彼女に甘えている。
彼女の寛容さと優しさと強さに。



(つづく)

[ 2017/09/21 02:01 ] ゴンドラの唄 | TB(0) | CM(0)

№2 朱き唇

麗香はその番号をプッシュするまでに、何度か峻巡した。
これまでにも数度、このような状況におかれたことはある。

はじめて彼に頼ったのは、友村刑事の件で警察官の職を辞した時だった。
はじめはただの軽薄で厭らしいナンパ男だと思っていた。
彼は不思議で、いつの間にか人の心を奪ってゆく才能を持っていると、麗香は思う。
どんな時でも冷静で、深刻な場面で冗談を言いながらもしっかりと状況判断をしている。
その鍛え上げられた逞しい体も、無意識に放つ男性的な色気も、何もかも。
一度、魅力的に思えたら、もう気持ちを止めることなど出来なくなっていった。
たとえ彼が誰かのことを想っていて、それがどんなに真剣なものでも。
その誰かが自分じゃなくても、彼の口から決定的なその事実を聴きでもしない限りは、可能性はゼロではない。
自分でも往生際が悪いとは、麗香も思っている。

今回の仕事(やま)は、非常に深刻な事態に陥っていて、それこそ彼に頼らざるを得ない危険な状況には違いない。
それでも彼へのSOSを少しだけ躊躇わせる麗香の心の揺れはきっと、あの時以来だからかもしれない。
伊集院夫妻の結婚式の日、撩と香の間に何かがあったのだろうことは、今では仲間内でも周知の事実だ。
撩と香の関係が進展することを応援する空気が、仲間内にも蔓延している。
撩に対して報われない恋心を抱いている存在など、空気も同然だと麗香は感じている。
あるいは、自分の考えすぎか、被害妄想か。
あれ以来、片想いはますます苦しさを増し、仲間内での疎外感さえ感じている。

ただひとつ、麗香にとって希望的観測ともいえる要素としては、彼らが未だ決定的な一線を越えてはいないだろうということだ。
たとえどんなに想い合っているとしても、まだあのふたりの間には隙が無いわけではないのだ。
お互いがお互いを想うが故の擦れ違いということもある。
そんなことすら願ってしまう自分に、麗香は正直嫌気が差している。
それでも好きなのだ、冴羽撩のことが。







『どうした?何かあったか?』



そう言って、真剣な眼差しを己に向けてくれる彼が。
自分の置かれた状況に耳を傾けてくれる彼が。
やっぱり、麗香は好きだと思った。

詳しい話を聴かせてくれ、と撩が言うので、地下で逢うことになった。
こんな場合でも、鏡に向かって口紅を塗り直す自分を何処か冷静な頭の片隅で、哀しく思った。
彼の心に、この気持ちの内どれくらいが伝わるというのだろう。
それをリアルに想像することは苦しいので、麗香はそれ以上考えることはやめる。
化粧気の無いあの女(ひと)に対抗する麗香は、逆に化粧で武装する。
彼女にあって自分に無いもの。
自分にあって彼女に無いもの。
何でも良いから、彼の心の琴線に触れてみたい。震わせたい。



『独りで突っ走るんじゃねぇぞ。』


麗香は嬉しかった。
疎外感さえ感じていた片想いの、当の想い人から。
自分は独りでは無いのだと、勇気づけて貰えたような気がした。
彼が単に、依頼の一環でそう言っただけだとしても。
この件に関しては彼に守られ、また、パートナーとして仕事に当たれる。
彼の相棒になるということは、こんな気分になるものだろうかと、
麗香は自分の立場を忘れて浮かれそうになる心を、必死に押さえる。





あ、撩···

ん?

ぁ、いいの。何でもない。





一通り話を終えて、早速これから情報収集にあたるという撩が背を向けて射撃場を後にしようとした瞬間、
麗香はつい、引き留めてしまった。
きっと、彼が戻る上の階には彼女がいて、いつもの日常があるのだろう。
そこに彼を返したく無かった。
彼を引き留めて、自分は何を言いたかったのだろうと、閉まったドアを見詰めながら麗香は考えた。



香さんのところへは帰らないで?それとも、香さんには、依頼のこと秘密にして?


言うまでもなく、撩は彼女にこの事は言わないだろうと麗香は思う。
彼の相棒で、彼の信頼を得て、彼に守られる彼女を。
彼は、本当に危険な状況には近付けない。
彼女の知らないことを、撩とだけ共有したいと思う反面、彼女にそれを知られたいとも思う。
撩と自分が彼女を差し置いて仕事をして、それを知った彼女が落ち込む姿を想像する。
泣けば良いのに。
私がこの恋で泣いたのと同じだけ、彼女も泣けば良い。



「サイテー」


広々とした空間に、麗香の声は反響した。
その言葉が誰に対するものなのか、麗香にもよくわからない。
誰かを好きになるということは、とても傲慢でとてもエゴイスティックだ。
恋は苦しい。
麗香は綺麗に紅を引いた唇を、噛み締めた。



(つづく)

[ 2017/09/24 03:14 ] ゴンドラの唄 | TB(0) | CM(1)