小生のフェチズムについて

こんばんわ、突然身も蓋もないタイトルで申し訳ありません。
ケシでございます。

最近、めっきり更新頻度があれな当ブログに於いて、久方ぶりの記事がこんなんであれなんですが。
ワタシ、脚フェチなんですよ(唐突に)
だから、原作(XYZedition参照)の絵梨子さん篇の『マイフェア撩ちゃん』の扉絵の、
スーツ姿のカオリンのおみあしを、時折見返してはノックアウトされそうになったりします。
(亜美さん麻美さん篇の密着内腿然り)

そして、最近気が付いたのですが、もう1つ判ったことがありまして。
ビジュアル面の好みで云うと、男性側がキッチリと服を着ているのに女性側の露出度が高い、
というシチュエーションに萌える性質だということです(握拳)
こういうのを、俗にCMNFっていうらしいけど、無意識に完全にこれですわ。
気になる方は、CMNFでググってみると意味解ると思います。
実はワタシ、どんな心理テスト的なモノをやってみても、完全にサディスト側の人間なんですけど。
そう考えると、ワタシのフェチズム的には完全にオッサン目線な訳ですよ。
道理で、冴羽氏の目線でカオリンを描写する方が好きなワケだ(*´∀`*)b
もう仕方の無いことなんだね、と思います。おみあしの綺麗なおにゃのこが好き(涎)
てか、具体的にいうとカオリンが好き。


数ケ月に一度、定期的にこのような発作に見舞われております。
もしも公共の電波でこのような欲望を駄々漏らしにしているワタシを発見しても、生温い目でスルー下さい。
ていうか、別にジェンダー的な云々をどうこう思ってる訳じゃないし、
こうしたフェチズムの感覚をつらつらと書き連ねることに不快感を抱かれる方が居ると申し訳ないんだけども。
どういう経緯でこうしたフェチズムの感覚が培われていくのかって、不思議だなと思うわけですよ。
そして、ワタシの場合を考えると、原因はCHにあるんじゃないかと90%くらいの割合で疑われるわけですよ。
単行本の表紙や扉絵の中のカオリンの露出度の高さたるや、いうまでもありません。
片や冴羽ですよ。
カオリンがどんなに露出度が高かろうと、安定のブルゾンコートTシャツ袖捲りのオンパレード。
冴羽の裸身が表紙及び扉絵で晒されることは殆どなく(がしかし、本編中はその限りでは無い)。
典型的なCMNFの法則が随所に見られるわけですよ。
しかし、その一連のフェチズムはひとえに、司の萌えとも直結すると思うんです。
レオタードが好きな司、タイトなジーンズに捻じ込むプリケツが好きな司、
カオリンになにかとエアロビさせたがる司。
そんなカオリンにやせ我慢で無関心を装いたがる冴羽(勿論、普段着着用)。
その冴羽にこそ、司イズムが注がれている気がするんですよ。
そんな漫画をですよ、思春期の頃から何度となく読み込んでいるコチラと致しましては、
こんな中年にもなろうというもんですよ。中坊の頃から、脈々と刷り込まれてきた司イズムですよ。
仕方ない(諦念)。

すみません、しょうもない自分語りです。
脚フェチです。

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[ 2016/08/01 23:34 ] 未分類 | TB(0) | CM(1)

あいくるしい

蒸し暑い雑踏を潜り抜け、物陰にひっそりと生きる情報屋たちとの遣り取りを交わす。
不穏な影はいまのところ特には無い。
撩は暑さには強いつもりだったけど、
四方をコンクリートで固められた街並みには逃げ場のない熱がこもり、さすがにバテ気味だ。
この国に来てもう結構な年数が経ったけれど、未だに慣れないと撩は思う。

脳天気な相方は、今頃撩はこの街の何処かで不埒なナンパにでも励んでいると思っているだろう。
確かにそういう時もあるけれど、そればっかりでも無かったりする。
こうして自分たちを狙う暗い影が無いかどうかを確認して回る撩を、彼女は知らない。
少し以前の、香がパートナーとして転がり込んでくる前の撩ならこうではなかった。
自分を狙う輩がいたとしても、わざわざ探りを入れることなどしなかったし、来るなら来いと思っていた。
逃げも隠れもする気は無かったし、万が一殺られてもそれが運の尽きだとしか思えなかった。
そんな以前の自分と今の自分が、どう変わったのかなんて撩には解らない。
解らないけれど、気が付くと定期的に街の中を探って回るのが撩の習慣になってしまった。
彼女によって齎された新しい撩の習慣だ。
ホームレスの皮を被った情報屋たちは陰でそんな撩のことを、
恋女房の尻に敷かれた若旦那だなんて揶揄しているらしいけれど、
撩の知ったこっちゃないので放置している。

そんな単純な話じゃないのだ。
色恋だとか惚れた腫れただとかそんな話じゃないけれど、
腹時計が騒ぎ始めたのでそろそろ帰るかと、撩は思う。









撩は汗だくでアパートの階段を上がりながら、既に途中からジャケットを脱いだ。
本当言うと、クソ暑いのにジャケットなんて着ていたくはないんだけど、
この国で銃を所持することは違法で、ホルスターを晒して歩く訳にもいかないので仕方なく羽織っている。
部屋に帰ると真っ直ぐにキッチンに向かう。
案の定、彼女は夕飯の準備中だった。
全開で換気扇を回しながら、ガス屋に貰った白いタオルを鉢巻きにして、
左手を腰に当て右手に菜箸を握り、揚げ油の滾る鍋の中を睨んでいた。首筋には汗の玉が浮かんでいる。
撩はそんな香を横目に、冷蔵庫を開ける。
するとすかさず香の突っ込みが入る。




手は?洗った?

ああ。



内心で、かーちゃんかよ、と思いながら、撩はシレッと嘘を吐く。
それどころでは無かったのだ。喉が渇いている。
とりあえず、ドアポケットに収まったプラスチックのジャグポットを取り出す。




ああっっ

ん?

それ、麦茶じゃないのっっ  めんつゆ。




香の言葉に、撩は手に握ったジャグポットを凝視する。
確かに麦茶にしては、少々色が濃い。
庫内を見渡すと、ちょうど目の高さの位置に茹でられて笊に上げられた細い麺が冷やされていた。




今日はあっついから、素麺にしようと思って。



香がそう言ったので、大量に製造中の小海老と水菜のかき揚げにも合点がいった。
ついでにシンクに目を遣ると、薬缶が流水で冷まされている最中だ。
ごめん、まだ冷えてないの、と言いながら油の中からかき揚げを引き上げる香の眉がハの字に下がる。
しかしすぐに悪戯っぽい表情に変わると、人差し指が冷蔵庫の中を指差す。



そっちにしなよ。



そっちとは、赤いバドワイザーの缶だった。
彼女直々にお許しが出るのなら、撩には全くもって異論はない。
ニヤリと口角が持ち上がる。
いつもの自分の席に座った撩がプルタブを開けたのと、
目の前に揚げたてのかき揚げが出されたのはほぼ同時だった。



アタシも飲もうかな。

おう、飲め飲め。



香がニッと笑いながらそんなことを言うので、撩は盛大に勧める。
自分一人で飲むのでなければ、日が沈む前の飲酒にも後ろめたさは無い。
彼女も共犯者だ。



ビールを飲みながら調理する彼女は、汗だくだ。
華奢な項に汗が浮かんで、癖毛が襟足に張り付いている。
色の褪せた紺色のTシャツにジーンズ姿でスリッパは履かずに素足だ。
タオルで鉢巻をしながら腰に手を当ててビールを呷る彼女の今の姿を、
彼女の兄であり元相棒である、かの男が見たら嘆くだろうな、と撩は思う。
槇村秀幸が知っている妹は、未成年のままだ。
香はあの頃に比べると、随分大人になった。
本人的には完全に無自覚だけれど、
きっと世間一般的には良い女なんだろうと、撩はまるで他人事のように考える。
だって他人事だと思わないとやってられない。


料理は何を作っても旨い。
長くて形の良い脚、ツンと上がったヒップにバスト、引き締まったウエスト。
中性的でありながら無意識に垂れ流す、健康的な色気。
まるで忠犬のようにひたむきに撩を信頼する眼差しと、仔猫のような無邪気さ。
なにより言葉にはしなくても、彼女は撩に対する好意を隠すことをしない。
まるで当たり前だと言わんばかりに、撩を甘やかす。
彼女にとって誰かを、(撩を、)愛することは容易いことなのだろう。
他人を憎むよりも愛することを選ぶ女を、あいくるしいと撩は思う。
それでもそう思った瞬間に、即座に脳内でそれを否定する。


撩にとって人を好きになるということは、彼女ほど簡単な話では無い。
撩には方法がわからない。
人を殺すことや、人を欺くことを教え込まれて生き抜いてきた自分を、
一番最初に手酷く裏切ったのが父親だと思っていた男だったので、
撩の考える愛情とは憎悪といつもワンセットだった。
撩が香に憎悪を抱く理由はない。
むしろ気が付けば彼女の無尽蔵な愛情を、溺れる程注がれている。
本当に撩は溺れかけているのかもしれない。
それでも腕の掻き方も、息継ぎの仕方もわからない。
注がれた愛情を受け止める器がない。
いつだってワンセットだと思っていた負の感情を、
持たなくても良いのだと急に言われても、撩の理解は追い付かない。
そんなに単純な話では無いはずなのに、
撩の行き場を無くした熱は身体の中にこもってしまって、やたらと喉が渇く。
わからないから、考えない。それで済むはずだったのに、何故だか胸が苦しい。
撩にとって、愛は苦しい。




わかんねぇ。



ビールを飲みながらかき揚げを摘んでいた撩が、
何の脈略もなくそう呟いたので香は振り返る。





何が?

んぁ?

わかんないって、何が?

ああ、独り言。




香は肩を竦めると、眉を持ち上げておどけてみせた。
出たよ、必殺秘密主義。と言って、笑いながら揚げ油へと視線を戻す。
背中を向けたままで、独り言云うようになったらオッサンだよ、なんて言うから。
撩は思わず、笑ってしまう。
やっぱり、相棒は愛くるしい。


嗚呼、苦しい。


今度は声には出さずに、心の中だけで撩はそう呟いた。
この苦しみの淵から救ってくれるのは、もしかするとこの苦しみの元凶たる彼女かもしれないと思いながら。







『あいくるしい』という言葉の語源には諸説あるらしいけど、
一説に愛しいと狂おしいが合わさった、というものがあって恐ろしくラブい言葉だなと思いました。
[ 2016/08/08 13:23 ] 短いお話 | TB(0) | CM(2)

初恋がテーマのお題です。

おはこんばんちわ、けしでっす(*´∀`*)ノシ

唐突ですが、新しいお題始めます。
10題しかないので、トントンと更新しようかと思ってます。
お題がどれもカオリンとりょうちゃんにしっくりと来たので、妄想が捗ります。



《お題タイトル》
1.一目で恋に落ちた
2.最初の約束
3.わからない事だらけ
4.戸惑い微熱
5.偶然を装って
6.突然こぼれた涙
7.精一杯の背伸び
8.名前を呼ぶだけで
9.「好き」の一言が宝物
10.独りきりの夜に


恋愛の進捗具合が、番号順に並んでる感じなので番号順で更新しようと思います。
1番から少しづつ進んでいく2人、みたいなイメージで。
とりあえず、今から『 1.一目で恋に落ちた 』 アップします(´∀`◎)




お題配布元:“天球映写機”さま
        (いつもお世話になっておりますm(_ _)m)
[ 2016/08/27 03:03 ] 初恋10のお題 | TB(0) | CM(0)

1.一目で恋に落ちた

まん丸い目をしていた。
この世界の汚い部分などまだ何も知らない目の色で、彼女は撩の胸倉を掴み泣きじゃくった。
彼女は時折しゃくり上げ言葉を詰まらせながら、兄と自分の関係を撩に打ち明けたけれど。
そんな兄妹の血縁の有無などに大した意味は無いだろう?と、撩はハンドルを握りながら内心思っていた。
得体の知れない男に勇気を奮い立たせて掴みかかる。
その行動のその根底にある心情がそのまま、彼女とその兄が家族であるという証だ。
かつて撩を拾い撩を蹂躙したかの男が、敵に捕まった撩を助けに来て脚を失ったのと同じことだ。
そもそも家族というものが撩には良く解らない。
解らないけれど、それは互いの距離が近過ぎて息苦しそうだと撩には思える。
そんな風に自分以外の誰かを“所有”してしまうような類の愛情に、
抵抗感がある反面、憧れの様な気持ちがホンの少しだけ入り混じる。
撩には永遠に持ち得ないもの。
飛行機から放り出された時に、もしくはあの男が撩にあの薬を試した時に、完全に損なわれてしまったもの。
この世で引鉄を引き続ける限り、撩からどんどん遠ざかって行くもの。
それが撩にとって、“家族”というものだろう。
撩は人生で、もう既に二度失った。







気を抜いて街中を歩いているようでいて、実際にはそうじゃないということだけは香にも判った。
人目の無い路地裏で、彼はそれまでと全く違う貌を見せた。
見上げると彼は大きくて、
その鋭い視線は、香が見た事のある他のどんなものとも違っていて、鼓動が跳ねた。
怖いというのとも違っていた気がするけれど、気が付くと腰が抜けて立てなくなっていた。
それでも恐怖より、興味の方が大きく膨らんだ。
兄が警察を辞めてまで巻き込まれてしまうほど、彼に何らかの魅力があるのがわかる気がした。
後に振り返れば、実際には彼の事などまだ何も解ってはいなかったのだけれど、
それでも香がドキドキしたことだけは、紛れも無い事実だった。
兄に対する心配事がそれまでの香の一番の大問題だった筈なのに、
彼の存在とその纏ったオーラは、一瞬だけそんなことをも忘れそうにさせる。
まだまだ狭い香の世界では、一番大きな存在はそれまでは兄だったけれど。
その出逢いが初めての異分子との遭遇で、それは香の世界の変わり目だった。







その存在は、相棒の口から洩れる端々に撩も感じてはいた。それでも、
妹がいて、大切で、目に入れても痛くなくて、失いたくないだなんて、槇村秀幸は言ったりしない。
恐らく、撩のような無法者にその無垢な存在を近付けることを、良しとしなかったのだろう。
彼はそういう男だ。
用心深くて、慎重で、思慮深い。
撩に香を近付けたくないと思っていても、それを言葉にすることで撩を傷付けるのなら、初めから言わない。
そういう全てをひっくるめて撩が感じ取ってしまうのは、そういう男だから仕方の無いことだし、
そもそもそんなことで、撩は傷付かない。
きっと自分がその立場でも、同じことをするだろうと思う。
だから槇村の意を汲んで、撩からもその話題をすることはほぼ無かった。
それでも時々槇村は、何事か深く考え込んでいるようなこともあった。
殺し屋稼業の男と日々、関係を密にしていくことの葛藤を抱えていたのだろう。
だからもしもこの先、槇村の方から相棒関係の解消を申し出たとしても、撩は快諾しようと考えていた。
撩と槇村秀幸の相棒関係には、沢山の暗黙の了解が散りばめられている。
撩は槇村の家族のことには触れないし、槇村も撩の過去には触れないでいてくれる。
互いにあるのは、目の前の片付けるべき依頼と(撩にとっては、可笑しな話だが)友情にも似た絆だ。
だから当の妹本人の登場は、撩にとって想定外の出来事だった。







その3月の晩の出来事を何度思い返してみても、
何故兄が冴羽撩との新たな仕事のことを香に隠すのかが解らなかった。
香には、彼らが悪いことをしているようにはどうしても思えなかったし、
危険が付き纏うのなら尚更、本当のことを全て話して欲しいと思っている。
冴羽撩の愛車に乗り込んでしまったばっかりに、初めての修羅場に紛れ込み、
気が付くと朝帰りなどしてしまったあの日。
兄にそれとなく、仕事のことを認めていると伝えた。
どんなに怪我をして帰って来ようが、ちゃんと自分の元へ帰って来てくれたらそれでイイと思えた。
兄が大切に思っている信条を貫ける仕事が、撩と共にあるのなら仕方がない。
それにきっと、あの男なら兄のことを守ってくれる気がした。














なあ、撩、話があるんだが。







なんて、分厚い度の入ったレンズの黒縁メガネを磨きながら、低く呟く槇村に。
撩は思わず味噌汁をごくりと飲み込んで、息を止めた。
酒臭い息を吐きながら昼過ぎに起きて来た撩に、
その味噌汁を作って差し出した張本人の表情からは、何も読み取れない。
撩に比べればこの世界では素人なのかもしれないが、彼もなかなかの切れ者で。
伊達に警察という組織の中で、この猥雑な街を見てきた訳でも無いのだろう。
彼は温厚そうに見えて、時折、撩が見てもハッとするほど鋭い視線や気配を纏う時がある。
常識人ぶっている分、狂気に満ちているのはむしろ、自分より槇村の方じゃないかと思ってしまう。
相棒が改まった声音でそう切り出したのが、
もしかすると二人のパートナーシップに関する事柄ではないかと撩は予感する。
そしてそのことが、想像以上に撩にはショックだった。
もしも解消を提案されればいつでも応じる気でいたけれど、思いの外それは淋しいことだと気が付いた。
それでも表面上は至って冷静に、一瞬だけ止めた息をもう一度吐き出して吸い込む。








ウチの妹な、どうやら今の仕事認めてくれたみたいだ。
今まで、俺の方からハッキリ言ったことも無かったんだけどな。
お蔭でまだ暫くは、お前のお荷物パートナーで居られそうだよ。







撩の内なる動揺など斟酌せずに、槇村はそう言って柔和な笑みを湛えた。
その顔と数日前の“シュガーボーイ”の面影が重なる。
血の繋がりなど無くても、きっと兄妹はよく似ている。
それまで具体的には何も撩には話さなかったくせに、槇村は突然そんな話を切り出したりして。
改めてよろしくな、と言って3杯目の白飯をよそうべく撩の茶碗を手に取った。

後で思い返せば、やはりこの時に槇村秀幸がパートナー解消を持ち出してくれていれば、
まだ引き返せたのかもしれない。
道はここで岐路を迎えた。
兄妹の運命も決定づけられた。
撩と香の運命も絡まった。
これをきっかけに、秀幸の中で何かが吹っ切れたのだろう。
その本性であるところの、筋金入りのシスコン振りを隠すことをしなくなった。
まだ誰も知らない未来のことだけど、秀幸の寿命へのカウントダウンが始まっていた。
もしかすると撩であれば少し想像すれば、そのリスクを考慮出来ていたのかもしれない。
けれど、そんなことなど考えたくなかったのだ。
撩は夢を見ていた。
それは恋に近い感覚だったのかもしれない。
自分には決して手に入れることの出来ない、“家族”という存在を手にした温かい男の紡ぐ世界に。
そしてその世界の先にある、丸い目をした無邪気な存在を守りたいと思っていた。
そんな思いが裏目に出るとも知らずに。






[ 2016/08/27 03:22 ] 初恋10のお題 | TB(0) | CM(0)

2.最初の約束

おまえは今から、女じゃない。俺の相棒だ。


いつだったか撩は香にそう言ったことがある。
あれは確か、兄を殺られた意趣返しのさなか、
ユニオン・テオーペの幹部が経営するカジノバーに行く途中のことだった。
そんなことを言いつつも冗談交じりに、セクハラ発言は繰り返していたわけだけど。
それはホンの最初の内だけで、気が付くと撩は香に対してそんな軽い冗談すら言わなくなっていた。
裏を返せばそれは、撩の本気の表れだとも言えるけれど、
男女の機微にひと際疎い香にしてみれば、至極難解なまるで解けない愛のパズルのようで、
今のところ撩の天邪鬼な想いになど気付く気配は微塵も無い。




はじまりは単に勢いだったと、香は思う。
兄と撩がその強大な組織に目を付けられ、命を狙われ、その矛先が向いたこと。
その中で、兄が死んでしまったこと。
仇を討ちたいと思ったのも正直な気持ちだが、香は何処か心の片隅で覚悟もしていた。
撩という存在が、香の前に登場した時からきっと、大きく世界が変わる予感はあった。
だから、撩がどのように考えていたのかなんて知らないけれど、
香としては仇討ちがひとまずひと段落しても、このアパートから出て行くことなど考えもしなかった。
気が付くと、ここに越して来て二年以上経過している。
依頼が来る方が稀で、大抵暇を持て余している殺し屋とその相棒は、
傍から見れば非常に呑気な生活を日々送っている。
日頃はスケベでぐうたらでどうしようも無い撩だけど、香は知っている。

初めて逢った高校生の時、ひょんなことから“現場”に同行してしまったあの晩。
戦争を喰いモノにしている成金親父に、
本当の戦場はこんなもんじゃないぜ、と言った冷酷なのに熱い不思議な目の色を。
それでいて小さな依頼人を見詰める優しい眼差しを。
兄を殺した組織の末端で、薬漬けにされて飼殺されていた女達を救ったことを。
様々な事情を抱えて助けを求める人たちの悩みを根本から取り去るのは、
法律とか倫理とかの枠の外に居る、撩にしか出来ない仕事だということを。
香は子供の頃から兄のようになりたくて、兄に憧れていた。
そして、兄が心から頼りにしていた撩のようになりたくて、憧れた。







はぁああ、お外出たくないなあ。めっちゃ暑い。






香は午後のリビングの床に転がって、ダラダラしていた。
扇風機が起こす風だけが唯一、香に優しい。
洗濯物など強烈な陽射しの下でとうに乾いて、畳んでクローゼットに仕舞うところまで既に終了した。
後は、本日2回目の伝言板の確認作業とスーパーへの買い出しと夕飯作りが、香のミッションである。
そしてそれ以前に考えねばならないことは、本日の献立である。
こう暑くては、さして食欲も湧かない。
香は最近、麦茶ばかり飲んでいる。
ダラダラしている今現在も、寝転んだ香のすぐそばに水滴を纏って少しだけ温くなったグラスがある。
フロアに直接置かれたグラスの下には、小さな水溜りが出来ている。
夕飯に何を作れば良いのか解らない、というかネタが尽きた。
コンロの前に立ちたくない。
でも洗い物の水が跳ねる感覚はきもちいい、というか水遊びがしたい。
といった風に、まるで現実逃避のように思考はぐんぐん夕飯作りから逸脱してゆく。

それにどうせ、
アタシが何を作ろうと、
撩のヤツ、
ナンパの延長でそのまま飲みに行って、
夕方に作ったはずの夕飯は、冷蔵庫の中で古くなっていく。
それがヤツの胃袋に収まるのは、香が寝静まった夜更けのことだ。











ばかみたい。






声に出してみてそう言うと、本当に馬鹿なのだという気持ちになる。
香自身のことだ。
いっそ、夕飯なんて一日くらい作らなくたって、誰にも迷惑は掛からないだろう。
撩なんて、何処か外で適当に食べて来たらいいのだ。
と思いながら、何故だか香はいつも律儀に作ってしまう。
汗をかきながら、そんなに食欲がなくても、撩が食べるのを想定した膨大な量の食事を。
そしてたった今、香は気付いたことがある。




これは、恋なのかもしれない。
単純に正義の味方みたいな、かっこいい兄貴みたいな撩みたいになりたくて、
憧れているのだと思って来たけれど。
それならどうして、香を放って撩が飲みに行ってしまうことが、こんなにも淋しいんだろう。
どうして、撩は何が食べたいかな?って考えてしまうんだろう。
どうして、たとえ夜中であっても余所の料理じゃなく自分の作った物を食べて欲しいと思ってしまうんだろう。
どうして、こんな気持ちになるんだろう。

最初の約束では、香が彼の相棒でいる為には女であってはいけなかった。
香も勿論、そんなの覚悟の上だった。
兄のようになりたかったんだから、そして撩のようになりたいのだから、
撩の言葉に異論は無かったはずなのに。
その約束は今、香の心を苦しめている。
こんなことに気付かなきゃよかったと、手探りでそばにあるグラスに手を伸ばす。
寝たまま水分を飲むことは難しいけれど果敢に挑戦して、唇から零れた麦茶を手の甲で適当に拭う。






やばい、めんどくさいことになった。






何が面倒って、恋をする相手としてはあれほどの難敵いないんじゃないかと、
香は相棒の顔を思い浮かべる。
今まで好きな男の子なんて出来た事なかったのに、
何でよりによって初恋が撩なのよ、と香は自分自身に憤る。
捨ててしまいたい。
気持ちや感情というものを、もしも自分の都合に合わせて選べるのなら。
こんな気持ちは要らないと思う。
ナンパをする撩や依頼人にデレデレする撩に苛立って、嫉妬をするようなこんな気持ちは要らない。
だってきっと。

撩は多分、香のこんな気持ちを知ってしまったら迷惑だろうから。

香がそう思うのと同時に、ますます起き上がる気力が湧いてこなくなった。
一度、心の奥に芽生えた気持ちはコンコンと湧き出して、要らないのに枯れてくれないくせに。
この優しげな扇風機の風が香を甘やかして、暑苦しい世界に出て行く気力を削ぎ続けている。
子供の頃から、誰も香のことを本当には甘やかしてなんてくれないから。
香は自分自身で浮上する癖をつけてしまった。
自分独りで考えて、自分独りで完結して、
自分独り諦めれば色んなことは丸く収まるということを、経験則から知っている。







それでも、槇村香は大切で単純な世の中の真理を実はまだ知らない。
ひとの気持ちも、考えも、いずれ変わるということ。
それは絶え間ない川の流れのように、巡りゆく季節のように、刻一刻と模様を変えるものなのだ。
現在進行形で香も変わるし、実は当の相棒である冴羽撩なんか、コロコロ日替わりで、
不意に己の人生に登場してきた親友の妹という名の美人の相方と、
どのような距離感を持って接すればいいのか。
日々、検討し、模索し、足掻いている渦中にいるということを、香だけが知らないのだ。
この冴羽アパート601号室に於いて、
初恋という名の青い春が、イイ歳こいた男と女を地味に振り回している。




[ 2016/08/30 00:14 ] 初恋10のお題 | TB(0) | CM(1)