大工(でぇく)に萌え萌えしてます。

おはこんばんちわ、ケシです(*´∀`*)ノシ



いやはや、今年の初めから春ごろにかけて、
やたらウチの近所ではマンションやら戸建やら建設ラッシュでした。
多分、消費税の増税とかに色々と関係があったのかもしれません・・・。

何にしろ、ワタシには関係の無い事では御座いますが。
そのような現場の傍を通る度にですよ、妄想は止め処なく膨らんでおった訳ですよ。
いや、冴羽氏に作業服って似合うんじゃね?と。
彼は肉体派なので、大工とか鳶とか似合いそうだし、
カオリンが嫁で毎日お弁当とか作ってたら、可愛いなと。

そしてここへきて先日、本屋でとっても幸せな出会いをしたのです。ケシ子は。



山本周五郎先生の短編で、『ちいさこべ』というお話しがあります。
江戸時代の時代小説ですが、老舗の若棟梁とそこで住み込みで働く家政婦のお話しです。
江戸の大火で先代の棟梁と女将さんが焼け死んで、焼け出された若棟梁が、
『大留』(今でいう、工務店みたいな感じ)を一生懸命再建するお話しです。

そして、このお話しの時代設定を現代に変えて、望月ミネタロウ先生が漫画化したのです。
それがもう、カワイイのなんの(やばい)
今現在も、スピリッツかなんかで連載してるらしいけど、ワタシは漫画雑誌には興味無いので、
専ら、単行本専門です。
もう読んでる内に、茂次さんがムチャクチャカッコ良く見えてくるし(ヒゲとロン毛で顔は見えないケド)
りっちゃんに萌えているのは、きっとカオリンに萌えるのと同じ類の萌だし。
キュンキュンするのです(*´∀`*)

なので、何だか意味は不明だけど、描いてみました。


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[ 2014/07/02 22:03 ] お絵描き練習 | TB(0) | CM(0)

※基本スペック※必読※

※このお話しはパラレルです※

いつもの2人とは、設定が異なりますので、くれぐれもご注意を!!
以下、スペック詳細をお読みになって、OK,問題無しっっ。
と思われる方のみ、


『第1話 町内会青年部の場合』へ、お進み下さいませ。





❤僚(夫)❤   

凄腕探偵。(あくまでも探偵、スイーパーでは無い。)
別名:新宿の元種馬。今は、嫁一筋。(一応)
頭脳明晰で超強いケド、カオリンにだけ弱い。
カオリンLOVEだけど、セクシーお姉さんに釣られる事、多々有り。(弱点)           
妻の呼び方は、カオリン。



❤香(妻)❤

探偵助手。おっちょこちょいで、お人好し。
料理上手なので、フラフラと落ち着きない夫のを胃袋からガッチリ掴んでいる。
抜群のルックスと、愛嬌の良さでご近所のアイドル。(ファンクラブ有)
リョウちゃんLOVEだけど、怒らせると凶暴。
夫の呼び方は、リョウたん、りょお(怒)、モッコリバカなど。



❤槇ちゃん❤
カオリン兄。警視庁新宿署刑事部捜査第1課、刑事。
基本、妹に激甘なので、しばしば情報を漏らす。(無意識に)
僚とは、幼馴染み。



❤ミック❤
フリージャーナリスト。事件の臭いを嗅ぎつける嗅覚は犬並み。
僚とは、学生時代からの友達。飲み・遊び仲間。女好き(弱点)
只今、警視庁・鑑識班のかずえちゃんに猛アタック中。



❤野上冴子❤
槇ちゃんの上司。女豹。僚は、時々彼女に釣られて利用される。カオリンの天敵。



❤かずえちゃん❤
警視庁・鑑識班。知的なクールビューティー。



❤伊集院夫妻❤
冴羽家とご近所の、仲良し夫婦。カフェ経営。
カオリンと、美樹ちゃんは、町内会婦人部のゴミ出しマナー向上委員会のメンバー。
ゴミ出しマナーには煩い。



❤教授❤
僚の祖父。世界のあらゆる情報を覗ける凄い男らしいが、詳細は不明。
実は、冴羽家の嫁であるカオリンのファンクラブの会員でもある。





またもや、夫婦探偵です。
前回、リョウちゃんが種付けに成功しましたが、その後のお話しを書くつもりは今のところ無いので。
今回の事件は、子作りに励む以前の新婚さんの2人のお話しです。
カテゴリの夫婦探偵シリーズを分り易いように時系列に並べました。





[ 2014/07/05 19:57 ] 夫婦探偵社「不実」 | TB(0) | CM(0)

第1話  町内会青年部の場合

リョウちゃん、ブイヤベースとかレンズ豆のサラダとかそんな小難しい感じじゃなくてさ。
                                     もっと初心者向けのヤツにしてね。










喫茶キャッツアイのカウンター席でそう言ったのは、町内会副会長の薬局のオヤジだ。
このオッサンの店は冴羽夫妻の行きつけで、とある商品の売り上げには随分と貢献している。
そもそも事の発端は、年度末の収支報告を兼ねた町内会の寄合での事だった。
彼らの町内会には、場所柄、子供会が無い。
子供がいるような世帯はこの辺には無いのだ。
最も多いのが、夫婦だけの世帯か単身者で単身者の殆どは、町内会の活動などに参加しない。
高齢者も殆どいない。
一般家庭から集める町内会費とは別に、町内にある企業からは協賛町費というものを集める。
あくまで任意だが、それでも結構な額が集まる。
その割に、老人会・子供会の無い町内会なので町費が余るという現象が毎年起きる。
とは言え、町内会メンバーもかなりの割合で個人事業主なので、協賛町費を納めている立場だ。
青年部・婦人部しかない6丁目町内会では、毎度の事ながらその使い道が主な議題なのだ。


今年の寄合で、会長が提案したのが何らかのセミナーを、講師を招いて行おうというものだった。
そして実際に何をするのかという段になって、青年部に提案されたのが、
『たまには妻を労おう・男だらけの料理講座』なるものだった。

これに異を唱えたのが、撩だった。
曰く、何で料理教室なんて今更・・・かったるい。という訳だ。
ここで、嫁・香も援護した。



りょうたんは、お料理出来るもんね♪習わなくても。



その香の言葉に感嘆したのは、町内会長の酒屋のオヤジだった。
何故だか話しは妙な方向に転がり、喫茶・キャッツアイに於いて、
撩は近所のオッサン共に、料理をレクチャーし、
ついでに伊集院隼人はお菓子作りをレクチャーする事になった。











・・・初心者向けねぇ、っつーかいつの間にそんな話しになってんの?




ていうか、どっからその献立が出て来るのさ?という、撩の質問に。
薬局のオヤジが得意気に答えたところによれば。
どうやら、香に訊ねたらしい。
撩の作った料理の中で、何が一番おいしいのかと。
それが、ブイヤベースとレンズ豆のサラダだったらしい。




いやぁ、やっぱ新婚家庭の献立は違うねぇ。
しかも旦那の手料理だよ?
そりゃあ、コンドームもせっせと使うわなぁ。
ウチの女房なんか、毎日煮しめだよ?
食卓、茶色一色だよ?
色っぺぇ事なんか、とんとご無沙汰よ。




そう言って高笑いする町内会副会長に、撩は軽く殺意を覚えた。
幸い嫁のカオリンは、今日は親友の絵梨子と繁と一緒に女子会ランチに行ったのでこの場にはいない。
だからこそ撩は、この店で1人ランチを摂っていたのだ。
きっと香が居ても、この空気の読めないオッサンは同じ発言をしただろうと撩は考える。
撩は話題を変えるべく、伊集院隼人に水を向ける。
彼はこのカフェに於いて、スイーツ部門を担当している。
何故だか今回のオッサンたちのお料理教室に関しては、ある意味、撩の巻き添えを食った形だが。
意外にもやる気満々で、乗り気である。





海ちゃんは何作るの?

スイートポテトだ。



そう言って、無口な彼は黙々とグラスを磨き始めた。
非常に解り難いが、表情の読めない濃いサングラスの彼は今とても上機嫌だ。




ファルコンのスイートポテト、絶品よ?ここで出しても凄い評判なの♪



香と負けず劣らず旦那LOVEな伊集院美樹は、すかさず夫を褒めちぎる。
撩はそんなラブラブバカップル夫婦に苦笑しながら、副会長に向き直る。




で?どういうのがイイの?献立。



結局は撩も、数日後のお料理教室に備えて、青年部部長として協力するつもりらしい。
町内会の会合が終わった後、香が嬉しそうにしていたのを思い出す。



りょうたん、お料理の先生なんてなんかカッコ良いね♪



人の気も知らず、カワイイ嫁は可愛いけれど脳天気だ。
それにしても、ブイヤベースが好きだったんだ・・・と、撩は香の事を思い出して頬を緩める。
伊集院夫妻の事は言えない、撩と香も中々のラブラブバカップルである。
今日の晩ご飯は、自分が作ろうとにやける冴羽撩(町内会青年部部長)であった。




(つづく)

[ 2014/07/05 19:58 ] 夫婦探偵社「不実」 | TB(0) | CM(0)

第2話  町内会婦人部の場合

彼女の名は、唐沢妙子という。

料理研究家であり、節約術、収納術、家事のエキスパートとして数冊の本を出版し、
テレビ出演もこなす。
主婦の間ではカリスマ的な人気を誇り、いくつかの雑誌には連載も持っている。
そんな彼女の一番の仕事は、そういった人気を利用した各種セミナー、講演会だったりする。
彼女の夫・真一は、そもそもあらゆる方面のセミナーなどを企画するコンサルタント業で成功した男だ。
一般企業新入社員向けの社員教育を目的とした、ビジネスマナー講座。
中小企業経営者向けの節税対策セミナー。経費削減対策セミナー。
広い範囲の社会人を対象とした自己啓発セミナー。
主婦向けの人気講座の中には、妙子が講師として携わる収納術セミナーや料理講座などもある。
どんな内容であれ、その道にはそれぞれ専門家という肩書の人間が居て。
唐沢真一はそのような人間を講師として招き、その教えを乞おうという参加者を募る。
妙子のように著作を持ち、テレビや雑誌で名前の知れた講師には必然的に参加者も殺到する。
需要と供給に応じて、講師と参加者をセッティングして講習料を徴収する。
場所代、講師へのギャラなどをざっと差っ引いても、充分な利益の得られる商売だ。
元手となるものは殆ど要らない。
必要なのは、クリーンなイメージと時流を読む勘だけだ。
こういう商売は、不況な時ほど儲かる。
羽振りの良い時には誰しも自分磨きなど目もくれない、世の中に多少不安を抱いている時こそ。
抜け目ないと自分で思っている輩は、何か次に飛躍する為の糧を求めて他人に教えを乞う。
それでも、唐沢真一に言わせればその発想こそが凡人に過ぎない。
本当に抜け目のない人間は、そのような輩の心理を先読みして金を儲けるのだ。









町内会の会合で、青年部のメンバーは撩と伊集院による料理教室をする事になったが、
(しかし、結局のところ当初の目的の、町費の使い道としてはやけに安上がりに纏まった。)
婦人部のメンバー8名は、主婦のカリスマ・唐沢妙子の節約収納術講座へ参加する事になった。
この日の講座は比較的小規模で、婦人部8名以外の参加者は7名。計15名の会だった。
講座の名目が“節約”収納術にも関わらず、会場となった貸し切られた小洒落たビストロは、
雑誌や情報番組でも度々注目を集める、人気店だ。
参加費が幾らするのかなんて、婦人部の面々は知らない。
言い出しっぺの町内会長(酒屋のオヤジ)が、申し込んだのだ。
噂では、酒屋の女将さんは典型的な収納下手で、家の中が年中とっ散らかっているらしい。
いずれにしても、青年部とはえらい違いだ。


参加者は初めに、各人前もって準備されたネームカードを首から提げる。
メンバーはランダムにシャッフルされ、
5人1組でグループに分かれ実演を交えた様々な講義を受ける。
講義は午前と午後に振り分けられ、合間には勿論、人気店のランチで和気藹々と盛り上がる。
もしかすると、本日のメインテーマはこれなのかもしれない。
だとすれば、酒屋のオヤジには気の毒だが、とっ散らかった家の中が片付くかどうかは保証できない。


偶然にも、香と美樹は5人グループも同じになった。
この日、香は唐沢妙子の料理本を鞄に忍ばせて来ていた。
隙を狙ってサインを貰おうと思ったのだ。
香は元々、料理は好きだ。
結婚前は主に、仕事の忙しい兄の為に。結婚してからは、食いしん坊の夫の為に香は料理をする。
毎回、気持ちよく平らげてくれる最愛の夫は、出がけにいつまでも甘えて抱き付いて来たので。
美樹が迎えに来るまで、2人は玄関先でイチャイチャしていて、美樹に呆れられた。
香は色んな料理本の中でも、妙子の本は比較的気に入って読んでいたので、
本当は料理講座の方が良かったけれど、
収納術講座でも本人に逢える機会が持てて数日前から喜んでいた。



これにね、サイン書いて貰うの♪



そう言って、彼女の著作の中でも一番のお気に入りの料理本を、
セミナー前日の喫茶キャッツ・アイで、撩や伊集院夫妻に見せていた。
そして幸いな事に、ランチの席で妙子のすぐ傍に陣取った香は、予定通りサインを貰った。




あの、もしも人違いでしたら申し訳ないんですけど。



ランチも終盤に差し掛かった頃、妙子が香に切り出した。
冴羽という苗字が、あまり何処にでもいる名前では無い事。
どうやらこの美しい若妻は新婚ホヤホヤで、
一緒に参加している仲良しの友人にしきりに夫の話しをしている事。
彼女らが、新宿6丁目の町内会という単位で参加している事。
その全てが当て嵌まるのだ。




もしかすると貴女、冴羽教授のお宅のお嫁さんではないですか?

・・・冴羽・・教・・授???



唐突な質問に、香はキョトンとして首を傾げた。
香の最愛の夫は、生憎、私立探偵だ。
暫く考えて、あっと思い出したのは、今では自分の祖父でもある、撩の祖父だ。




教授って、おじいちゃんの事ですか?



香はそういうと、祖父の名前を出してみる。
すると、妙子はやはりという風に大きく頷いた。
世界は狭いもので、意外な所に繋がりがあるモノだ。




私、教授の教え子なんです。もう随分昔の話しですけど・・今でも、お世話になってて。
少し前に、可愛いお嫁さんの話しを楽しそうになさってたから、もしかしてと思ったんです。







それから、楽しげに盛り上がる他の参加者を後目に、香は妙子と意気投合して語り合った。
元々香は、人見知りはしないタイプだ。
どういう訳かいつの間にか、香は収納術よりも料理講座の方に興味があったという話になって。
妙子が良かったら今度、ウチで気軽なホームパーティをするから、
その時一緒に料理を手伝ってくれないか、という話になっていた。
彼女の料理教室は人気で、随分先まで予約で埋まっている。
そんな彼女に、直接教わる事が出来るチャンスに、香は2つ返事で頷いた。
一緒に話に加わっていた美樹も誘われ、勿論美樹も喜んで頷いた。


こんな楽しい展開になった事を、帰ったらりょうたんに報告しなきゃっっ。と、
香はピスタチオのクリーム・ブリュレを堪能しながら、考えていた。




(つづく)




[ 2014/07/06 22:59 ] 夫婦探偵社「不実」 | TB(0) | CM(0)

第3話  冴羽家寝室

ホームパーティー?

うん、美樹さんと一緒に。厳密には、お客さんでもあり妙子先生のお手伝いでもあるの。

他はどんなメンバーなの?





風呂上りの半乾きのままの香のブラウンの癖毛が、撩の顎を擽る。
キングサイズのベッドの上で抱き込んだ嫁は、
グレイのシンプルなタンクトップ(ブラジャーは着けてない)に、
撩と揃いの(カップル用にデザインされているのだ)ピンクのボクサーショーツ姿で、
無防備に撩の脚に滑らかでしなやかな脚を絡めてくる。
肌の色も皮膚の質感も体温も違う互いの脚は絡み合い、
至って普通の夫婦の会話をしているだけなのにやけに淫靡だ。
もっとも当事者たちは無自覚だけど。

2人は毎晩、一緒に風呂に入る。
結婚して2人で暮らし始めた時から、それはいつもの冴羽家の習慣だ。
お互いに体を洗いっこして、髪の毛を洗ってあげる。
気が付くと彼らのバスタイムは、いつも長時間だ。
つい先程も、2人は仲良くお風呂で一戦交えてきた所である。




ん~~、良く解んないけど、みんな妙子先生と親しい間柄の方ばかりだから気兼ねは要らないって。

ふぅん、男も来んの?



柔らかな癖毛に顔を埋めて、撩はさり気無く言ったつもりだったけど。
思いの外子供っぽい口調になってしまった。
りょおたんヤキモチ妬いてるっっ、と言いながら撩の裸の胸板に頬をくっ付けた香がクスクス笑う。
うるさい、と言いながら撩は照れ隠しに香の鼻を抓む。



でも、男の人はいないみたいだよ。女子会だって言ってたもん。



鼻を抓まれたままの鼻声でそういう香に、撩は頬を緩める。
こんな風に何の変哲も無いのんびりした時間が、撩の一番好きな時間だ。
19になったばかりの香と結婚して1年。
香はまだまだ漸くハタチになったばかりで、2人のこれからの人生は長い。
毎日、撩は彼女と結婚出来て良かったと思っている。





世間は狭いよなぁ、まさかじいちゃんの知り合いだったなんて。

ねぇ、ビックリしちゃったぁ。お陰で、お料理を直接教えて貰えんるんだもん、超ラッキーだよ。

何、作るの?

まだ解んない、当日のお楽しみ。・・あっっ!!

ん?どうした?





突然、素っ頓狂な声を上げる香のおでこに、撩は優しく口付る。
香は擽ったそうに首を竦めただけで、何も言わずにされるがままなので。
それを良い事に、撩は軽いキスの範囲を徐々に広げてゆく。





そう言えば夕方ね、八百屋のオジサンに会ってね。
すっごく喜んでたよ。
りょうたんに教わったあんかけ茶碗蒸しと、高野豆腐の含め煮、奥さんに褒められたんだって。





婦人部のセミナーに先立つ事2日前。
例の青年部のお料理教室が、喫茶・キャッツアイにて行われたのだ。
あんかけ茶碗蒸しは一見難しそうに見えて簡単なので、男の手料理としてはもってこいの1品だ。
香はまるで自分の事のように誇らしげだ。
撩は華奢な香の左手をしっかりと握る。
指同士をしっかりと絡め、薬指のリングの感触を確かめる。
楽しそうな香の話し声を聴きながら、彼女の手の甲を口元へと引き寄せる。
そのスベスベで真っ白な手の甲は、風呂でもキッチンでも水滴を玉のように弾く。
その手の甲にも口付を落とす。






カオリンはさぁ。

なぁに?

別に習わなくても上手じゃん?料理。

・・ほ、ほんと?///

ああ、完璧。俺には、カオリンが作るご飯が一番。

りょおたんっっ





そこから先、新婚バカップル夫婦に言葉は要らなかった。
撩の胸板に顔を埋めた香を抱いたまま、体勢を入れ換えて組み敷く。
口付ける。
呼吸も侭ならないほどに激しく求めれば、華奢な指先は行き場を求めて撩の胸板を擽る。
邪魔なタンクトップをせっかちに脱がせ、柔らかな双丘に顔を埋める。
甘やかなボディソープの匂いのする肌を舐め上げる。



気が付くと2人はいつもこんな風で。
何の話しをしていても結局は、いつの間にやらイチャコラタイムへと突入してしまう。


兎にも角にも次の週末に、香は憧れの料理研究家の先生宅へ招かれたらしい。




(つづく)






[ 2014/07/07 20:54 ] 夫婦探偵社「不実」 | TB(0) | CM(0)

第4話  パーティー

ねぇねぇ、美樹さん。

ん?どうしたの?




夫の真一に声を掛けられて、妙子がキッチンを出て行ったのを確認して香が小声で耳打ちする。
妙子に招かれた2人は、都心の某高級住宅街の豪奢な住まいを訪れていた。
なんでも撩によれば、妙子の夫はコンサルタント業で成功している実業家らしい。
広々とした邸内には、そこかしこに贅沢な暮らしぶりが窺われる。
家政婦などを雇っている風ではない屋敷の中は、
隅々まで磨き上げられまるでインテリア雑誌の中から飛び出したような世界だ。
さすがは主婦のカリスマ。
どんなに多忙を極めても、家の中の事には手を抜かないのだろうと。
香と美樹は何を見ても感心した。
彼女たちは極度に愛妻家の夫を持っている2人だ。
主婦の鏡のような妙子を尊敬の眼差しで見詰めてはいても、
2人が2人とも、改めて己の旦那の優しさをこういう時に再認識する。
私立探偵も喫茶店のマスターも、いつだって自分から進んで妻の手伝いをしてくれる男達だ。





こんなお家だったらね、節約収納術とかそもそも必要無いよね。

そうね、羨ましい限りね。




キッチンもユーティリティーも全てが、家事を行う者にとって使い易いように作り付けられている。
きっとこの家を建てる段階で、妙子の意見や要望が随所に採用されたのであろう事は一目瞭然だ。
香は広々とした(如何にも料理研究家らしい)キッチンの、
壁一面に作り付けられた棚を見ながら、溜息を吐く。
過不足無い収納スペース、棚や引き出しの大きさや形状の使い勝手。それらは本当に見事だ。





やぁ、いらっしゃい。



香と美樹が、良いわねぇと言いながら溜息を吐いている所に現れたのは。
この家の主人である、真一だった。
スーツ姿で現れた彼は精悍な体つきに自信の漲った表情で、如何にも実業家といった風情だ。




すみません、折角お越し戴いたのに何のおもてなしも出来ませんで。
生憎、私は今から仕事に向かわねばなりません。出来れば、貴女方とご一緒したい所なんですが。




日本人男性(それも、中高年)としては、珍しくソフトで社交的な物腰である。
商売柄、そういう事には長けているのだろう。
そんな彼の横でブリーフケース片手に微笑む妙子は、幸せそうな奥さんという感じで。
香は単純に、幸せそうなご夫婦だなと目を細める。




あら、今日は女子会なのよ?たとえ貴方でも男子禁制ですから。

はいはい、奥様。男は退散しますよ。



彼はそう言って笑うと、妙子から鞄を受け取って行ってきますと言って出て行った。
その時にさり気なく頬にキスをする仕草に、香は思わず視線を彷徨わせ赤面した。
香自身の日頃の夫とのスキンシップはそんな生易しいモノでは無いのだが自覚は無いので、
目の前で余所の夫婦のそんなシーンを目の当たりにして、自分の事は棚上げして狼狽する。
そんな香の表情の移り変わりが手に取るように解るので、美樹は美樹で苦笑する。
この日も、美樹が冴羽家に迎えに行くと撩と香は玄関先でイチャイチャしていた。
それはもはや、冴羽家の習慣と言っても過言では無い。

まだ、この後に起こる事など予想だにしない程、出だしは穏やかな週末だった。











コチラは、冴羽香さんと伊集院美樹さん、今日のお料理を手伝って下さったのよ。




そう言って妙子は2人を、その他のメンバーに紹介した。
香、美樹、妙子の他に、参加者は4名いた。

真一の秘書だという、野村麻衣子。
妙子の料理教室の信奉者でもありプライベートでも仲の良いモデルの、桜井栞。
妙子の古い友人だというイラストレーターの、野口環。
真一の会社で受付嬢をしている、佐々木亜矢。


年齢も職業もバラバラだ。
全員、唐沢夫妻と親交の深い顔ぶれらしい。
4人はお互い同士もそれぞれ面識があるようで、仲の良い友達同士というような雰囲気だった。
事前に妙子から聞かされていた通り、気兼ねせずに和やかな雰囲気だった。
香も美樹もすぐに打ち解けた。









綺麗なお庭ですね。


20畳ほどの広いリビングにサンルームが続いている。
サンルームの中には、様々な種類の美しい花が幾つも活けられている。
どうやら妙子は、植物を愛でる趣味もあるらしい。
香はサンルームの窓から、手入れの行き届いた庭を眺める。
香も撩と暮らすあの愛の巣の屋上で、家庭菜園をやっている。
そもそもコンクリートの屋上の上なので、プランターで育てている。
香は花よりも、実を付ける植物が好きだ。
勿論、育てたモノを美味しく頂けるのもそうだけど、
花を付けて実が徐々に大きくなっていく姿は、得も言われず可愛いものだ。
それに、祖父の家の立派な日本庭園も思い出すし。
秀幸の暮らす実家の庭の桜の木も思い出す。
その家の庭は、立派な英国式のガーデニングだ。
薔薇の蔓の伸びる棚や、背丈の低い常緑の木が綺麗に刈り込まれて植えられ、
その合間を縫うように様々な花が植えられている。
広い庭の数箇所に、可愛らしいバードバスが置かれている。
芝生の緑も素敵だと香は思う。
ウチの屋上にも芝生が生えていたら素敵だろうなと思う。



香さん、お花は好き?



香の言葉に、妙子が微笑みながら答える。







香が妙子と庭の事について話しているのを横目に、
美樹はイラストレーターの彼女に、色々と質問されていた。
夫と営む喫茶・キャッツアイに興味があるという。
夫婦で一緒に、同じ仕事を持つ事に憧れているらしい。
穏やかな午後の空気が一変したのは、そんな時だった。



まず苦しみ始めたのは、秘書の野村だった。
その次に、モデルの桜井も同じように苦しみだした。
少し遅れて、窓辺で香の隣にいた妙子も心臓の辺りを押さえて蹲った。


何が起こったのか解らなかった。
野村と桜井の苦しみように圧倒されたその他4名だけれど、彼女らも徐々に気分が悪くなりだした。
吐き気もするしお腹も痛い。
香が蹲った妙子を心配して、肩を貸してリビングのソファまで運ぶ。
明らかに全員、パニックだった。
それでも香は気丈に振舞わなければと、撩の事を思い出しながら考えた。
自分の具合も何だか悪いような気がするけれど。
まずは何とかしなきゃと、必死に思い巡らせて。
自分のバッグから携帯電話を取り出すと、119番通報をした。



(つづく)



[ 2014/07/09 23:36 ] 夫婦探偵社「不実」 | TB(0) | CM(0)

番外完結編  魚肉の息子

このお話しは、パラレル・嫁に来ないか(漁師と嫁)の番外編、および完結編です。
本編をお読みになられて無い方は、本編から順に読んで戴いた方が楽しめると思います。
今日は、夫婦探偵は1日お休みして、漁師と嫁と息子です(*´∀`*)ノシ











追記から↓↓↓↓

第5話  事件の幕開け

気分はどう? カオリン。



そう言って寝室に入って来た撩は、トレイに冷たいじゃがいものスープを乗せていた。
これ以上無いというほどに滑らかに裏濾しされたじゃがいもと、コンソメの風味が胃に優しい。

麗らかな午後のパーティーが嵐のような騒ぎに包まれて、2日。
香は寝込んでいる。撩の聞いてきた処によると、美樹も同じような状態らしい。
香と美樹の診断は、軽い食中毒。
抗生物質の服用と、安静と、食事に留意すること。
しかし、それだけで済んで幸いだったというべきかもしれない。




あの日、あの騒ぎの最中。
救急車が到着する前に、秘書の野村とモデルの桜井は亡くなった。
2人だけは、苦しみ方が尋常では無かった。
その次に酷い状態だったのは、唐沢妙子だった。
彼女はどうやら、軽い心臓発作のような状態になったらしい。
香と美樹を含むその他4名は、比較的軽度の食中毒で済んだようだ。



撩はあの時の事を思い返す。
撩は香から妙子の家に招かれたと聞いた時点で、唐沢家の場所は前もって調べていた。
もしも、帰りが遅くなったら迎えに行こうと思っていたのだ。
それが功を奏した。
香は救急車を呼んだ直後に、撩にも連絡を取っていた。
非常に慌てふためき普通でない香の様子に、
何か良からぬ事が起きているという事だけはハッキリと解った。
電話口の香を宥めながら落ち着かせ、撩は伊集院と連れ立って唐沢家へと向かった。

その豪奢な佇まいには似つかわしくない、救急車とパトカーが門の前に停まっていた。
撩と伊集院がその場に着いた時、妻たちは蒼白い顔で事情聴取を受けていた。
遺体と思われる2つの塊には、白い布が掛けられ。
この日のホストである、この家の主婦は重篤な症状だと判断され先に緊急搬送されていた。
撩たちが到着するのと入れ違いに、野口と佐々木の2人は搬送された。
比較的症状が軽いという事に加え、この日の料理を妙子と共に作ったとして、
2人は執拗に、何度も同じ事を聴かれていた。

見かねた撩と伊集院が、
警官と彼女たちの間に割って入って診察の後にしてくれと申し出たけれど、
警官は無愛想に、こういう事は初動が肝心なので、と取り付く島も無かった。
しかしながら、この事態は刑事が現場に到着した事で急転した。





あぁら、世間って狭いのなぁ。



そう言った私立探偵に、刑事が苦笑する。
彼らは幼馴染みで、今現在は義理の兄弟だったりする。



何やってんだ?お前ら。  マスター夫妻も・・・



けれど、槇村秀幸が呑気に構えていたのは、この時までだった。
制服を着た警官が事情聴取をしていた相手は、蒼白い顔で項垂れている最愛の妹だった。
見るからに具合が悪そうで、秀幸は眉間に深い皺を寄せる。


何やってるんだ?彼女たちも、被害者だろうがっっ 手当が先だ。




秀幸の剣幕で、現場の空気は一瞬にして引き締まった。
ここで漸く、香と美樹は聴取から解放され、夫に付き添われて病院に運ばれた。
秀幸は撩にも怒号を浴びせた。
曰く、何でお前が居ながら、さっさと香を病院に連れて行かないっっ。と。



いや、でもさ国家権力には逆らえないからさ。


そう言いながらも、2組の夫婦は現場を後にした。
それに、香も美樹も出来るだけ自分達が解る範囲で、捜査に協力しようとしていた空気だったので、
撩も伊集院も、その様子を静観していたのだ。









食欲は?どう?



撩は訊ねながら、香が起き上がるのを助ける。
背中を支えながら、香の背中とヘッドボードの間にクッションを差し入れる。
薄いレースのカーテンだけを閉め切った薄暗い午後の寝室の中で、
香の頬だけが柔らかそうな色合いをしている。
2日前よりも、顔色は随分良くなっている。
それでも、香は小さく首を横に振る。



顔色は、だいぶ良くなったね。



そう言って、撩は香の柔らかな癖毛を撫で、一続きに頬も優しく撫でる。
香は未だ、固形物は受け付けない。
この数日、撩は少しでも栄養が摂れるようにと、スープばかり作っている。
クイジナート社のフードプロセッサーが大活躍である。



じゃがいもの冷たいスープ、作ったよ。

わぁ。



それは、香のリクエストだった。
食欲は無いと言いながら、リクエストする程度には回復したらしい。
喜ばしい事だ。
撩は香の身体的症状もさることながら、実のところ、その精神的ショックの方を心配している。
原因は不明だとは言え、目の前で人が2人も死んでいるのだ。
暫くはこのまま、看病ゴッコをしながら可愛い嫁を甘やかそうと、撩は考えている。






お兄ちゃん、来たの?

あぁ、カオリンが寝てる時に。

そっか。




撩は秀幸から聞いた事を、思い返す。
死亡した、野村、桜井両名と、重症の唐沢妙子。この3人と、他4名の症状は明らかに違う。
香を含む4名は、診察の結果からも判る通りただの食中りだ。
しかし、野村、桜井に関しては明らかに、毒物による意図的な関与が疑われる。
また、妙子に関しては別の物の作用が働いているようだとの事だ。
同じ食卓を囲んだ7人が、それぞれ違った要因によって倒れたのだ。
この事からも、今回のケースは偶然の事故などでなく、
傷害致死、もしくは殺人・殺人未遂事件として捜査が進められる方針に決まったという事らしい。
2遺体の司法解剖の結果と妙子の診察の結果は鑑識に回され、精密な鑑定が進められている段階だ。




妙子先生は?どうなったの?

うん、意識は戻ったらしいけど、まだICUだって。

・・・。




香が一番に心配したのは、美樹の事だった。
撩が伊集院との電話のやりとりで聞いた所では、香と同じような状態らしい。
それを聞いて、香は顔を顰めたものの、安堵の表情を見せた。
その次に、気に掛けたのが妙子の事だった。
あの時、大騒ぎになる直前。
香は妙子と窓辺で、庭に咲く花の話しをしていたのに。
隣で幸せそうに微笑んでいた彼女は、見る見るうちに具合が悪くなって、
救急車で運ばれる頃には、意識を失っていた。





大丈夫なのかなぁ、妙子先生・・・

さぁ?どうかな? 何か解ったら、槇ちゃんが連絡くれるって言ってたから。




撩はベッドの端に腰掛けて、膝の上にトレイを乗せる。
お嫁ちゃんリクエストのビシソワーズを、一掬いスプーンで掬って香の口元へ運ぶ。
1人で食べれるよ?と言って、クスクス笑う香の言葉をスルーして。
過保護とも言うべき看病ゴッコを続行する。




そんな事より、カオリン。栄養摂取だよ。ほら、あ~~~~ん。
(あ~~、早くエッチしたい。)


素直な彼女は、撩の言葉に従って大きく口を開ける。
撩の切実な心の叫びなど知る由も無い。
早く普段通りに回復するように、撩は彼女に栄養を与える。
普通通りに回復したら、いつも通りにイチャイチャするつもり満々である。
撩としては、この件にこれ以上関わって行くつもりは、まだ無かった。
香の体調さえ回復すれば、一件落着。



けれど、物事はそう単純でも無いのが世の常である。




(つづく)


[ 2014/07/17 21:59 ] 夫婦探偵社「不実」 | TB(0) | CM(0)

第6話  依頼


「 赤や青の灯のともつた
  低い街の暗らがりのなかに
  倒(さか)しまになつたまま落ちてしまひそうになつてゐる三日月は
  いそいでゆけば拾ひそうだ

  三日月の落ちる近くを私の愛人が歩いてゐる
  でも きつと三日月の落ちかかつてゐるのに気がついてゐないから

  私が月を見てゐるのを知らずにゐます    」






明るいベランダに出て、洗濯物の揺れるの見ながら香は氷の入ったグラスを持っていた。
グラスの中身は冷たく冷やした玉露で、香は素足に撩のビルケンシュトックを突っ掛けている。
香は時々、ぼんやりしながら撩には良く解らない詩を暗誦している事がある。
数日寝込んで元に戻った香は、あれ以来テレビをあまり見ない。



良い天気だな。



声を掛けた撩に、香は振り返るとニッコリ笑った。
昨夜撩に抱かれながら、香が寝室の窓の外を見ると、三日月が出ていた。
撩はいつだって、香の事ばかり見ているから。
きっと昨夜が三日月だった事も知らない。
香はそんな撩を、心底愛している。
撩が裸足で、ペタペタとベランダに出て背中から香を抱きしめる。
香の手からグラスを取ると、香の飲み差しのお茶を飲み干す。
エアコンの室外機の上に空になったグラスを置くと、残った氷が澄んだ音を立てる。




ねぇ りょうたん。後で、お散歩行こう?

うん、いいよ。何処行く?




香がどうしてテレビを点けないのか、撩は知っている。
例の唐沢妙子宅で起こった一連の事件を、ワイドショーは連日、面白おかしく報道している。
何処までが本当の事かは、解らないけれど。
亡くなった2人は、妙子の夫・真一と不倫関係にあったと報道する所まである。
また、亡くなった桜井栞は人気の雑誌モデルでもあったので、そちら方面での動揺も広がっている。
いずれにしても、香が病み上がりでテレビを見た途端、その様な情報が嫌でも目に入って来て。
香はこの数日、すっかりテレビを見なくなってしまった。










一昨日、秀幸が夕飯を食べに来た。
どうしても話題は妙子の事件の話しになる。
秀幸の話しによれば、報道で言われているような事実は、今のところ裏付けは無いらしい。
鋭意、捜査中という事らしい。
しかし夫の真一は、その様に疑われても仕方の無いような女好きだという事に間違いはないらしい。



・・・・かわいそう、妙子先生。


秀幸の話しを聞いた後でそう言うと、香は黙り込んでしまった。
誰もが羨むような、仲睦まじい夫婦に見えたのに。
幸せそうなお家に、仲の良い友人に囲まれて、仕事も成功して。
それなのにたった数日で、今ではスキャンダルの渦中に巻き込まれている。
テレビや雑誌は今まで、彼女を女性のお手本、主婦の鑑のように持上げていたのに。
一瞬で掌を返したように、口汚く罵っているように香には聞こえる。
警察だって、まだ何の証拠も無いと言っているのに。
まるで彼女は犯人扱いされている。













新宿御苑。

りょーかい。




撩が冷たいお茶を飲んだ後の冷たい唇で、香の額にキスを落とす。
クスクス笑う香を見ながら、撩はもう一度、室外機の上のグラスに手を伸ばす。
透き通った氷を、ひと欠片口に含むと。
そのまま香に口付る。
冷たい欠片が、お互いの口の中を何度も行き来する。
暫くそんな風にふざけ合いながらキスを愉しむ。
小さくなった欠片を、香がコクンと飲み込んだ時に、電話のベルが鳴った。
リビングに2台ある内の、1台。
仕事用の冴羽商事専用電話だ。
それでも、香を拘束する撩の両腕の力は緩まない。




りょおたん、 でん・・わ鳴ってる。

良いよ、ほっとこうよ。



不真面目な夫は、冷たい舌先で妻の耳たぶを舐める。
けれどそんな事はいつもの事だし、依頼を請けないと食べてはいかれないので。
香は意を決して、撩の腕の中から脱出を試みる。
撩もあまりふざけていると、香を本気で怒らせるので良き所で香を解放する。
香は慌ててリビングに駆け込むと、受話器を握った。





はい、コチラ。夫婦探偵社・冴羽商事です。




それは、スキャンダルの渦中に飲み込まれた彼女からのSOSだった。




(つづく)

引用詩:尾形亀之助【月が落ちてゆく】




[ 2014/07/20 20:35 ] 夫婦探偵社「不実」 | TB(0) | CM(0)

ゆびきりげんまん

続き物のお話しを書いてて、記事を保存する段階で接続不良の為文章が消えました。
それが、かれこれ4~5日前。
(T∀T)オーマイガッッ
暫く、テンションがダダ下がっておったのですが。
気分転換に、短いお話し。(注:夫婦探偵ではありません)
(ワタシは何を隠そう、ブログ編集画面に文章直書きだったり致します。)
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じゃあ、指切りね。約束だよ?






そう言って撩の方に向き直った香は背中に、まるで後光の様な夏の夕暮れのオレンジ色を纏い。
細くて長い右手の小指を差し出した。
爪の先までノスタルジックな夕陽に染まり、
タンクトップを着た薄い肩も、まろやかにオレンジ色の輪郭に滲む。
暑い。
日本の夏は暑いと、撩は思う。
不思議な事に物心ついた頃から、もっと熾烈な暑さの中で育って来た筈なのに。
新宿の夏の方が過酷な気がする。
植物が足りないからなのかもしれない。
雑居ビルのダクトから排出される複雑な匂いの、淀んだ空気。
陰鬱な排気ガス。
裏通りにびっしりと並んだ室外機。
飛行機が引っ切り無しに飛び交い、雑踏は途切れなく大河のように連綿と連なる。
南米のジャングルの中のゲリラの集落は、暑さも湿度も新宿の比では無かったけれど。
ムッとする草いきれの中の空気は、何処までも濃密で淀みは無かった。
すぐ傍で緑色の生き物たちが光合成をしていたのだから、酸素は濃かったのだろう。
あの青臭い空気の中に、血の匂いさえ充満してなければ。
撩はあの土地が、意外に好きだったかもしれない。



撩の無邪気な相棒は、ベランダのエアコンの室外機の上に座っている。
暑い暑いと口癖のように呟く彼女は、シンプルなブルーグレイのタンクトップに、
ギンガムチェックのふんわりとした膝丈のフレアスカートを穿いて、
撩のぶかぶかのサンダルを突っ掛けている。
彼女が普段、外出時に着るスカートはタイトスカートが多いけれど。
こんな季節の部屋着としては、
ヒラヒラと心許ない(と、撩には感じられる。)フレアスカートの方が涼しいのだろう。
香は無邪気なのでイイ歳をして、まるであの高校生の頃となんら変わらない自意識だ。
無防備に投げ出された長い脚は、まるでスカートを穿いているという自覚が無い。
両膝頭は大きく離れ、逆に足首から先は足の裏同士を合わせるようにくっ付いている。
近所の児童公園で、同じような恰好でブランコに座っていた小学生を撩は見た事がある。
あのヒラヒラした薄い布切れが、エアコンの排気で煽られて捲れたら面白いのにと撩は思うけど。
残念ながら、エアコンは作動していないから室外機も微動だにしない。
長い事2人は一緒に暮らしているけれど、肉体関係は無い。






しょうがねぇなぁ、じゃあ仕事が済んだら海水浴にでも行くか。冴羽商事の慰安旅行って事で。





撩が数分前にそう言ったのは、ご機嫌ナナメの相棒の機嫌を取る為だ。
そもそも発端は、いつもの腐れ縁の同業者たちとの脳天気な予定のせいだった。
大抵そのような提案を持ち掛けるのは、向かいの堕天使の仕業だ。
揃いも揃って強面の、どう見ても堅気では無い裏社会の面々を誘って。
テーマパークに併設されたプールに行こうというのがその計画だった。
何処からか人数分のチケットを入手して来て、全員の都合の良い日程を調整する。
ミック・エンジェルという男は、こういう七面倒臭い事を嬉々としてこなしてゆく。
香の水着姿を拝む為ならば。
そんなミックの邪な煩悩など知る由も無い香は、無邪気にその日を楽しみにしていたのだ。
生憎、撩と香の冴羽商事は、万年日曜日なので予定はがら空きだし。
日程調整の際も、2人にだけは特に予定は訊かれなかった。
周りの連中も、まさかシティハンターの2人が欠席するとは思っていないのだ。


しかし、想定外はいつでも起きる。
事態が急転したのは、昨日の午後の事だった。
この2ヶ月、ウンともスンとも言わなかった伝言板に、その3文字があったのだ。
否、勿論、香は喜んだ。
何しろ、この依頼の手付を頂戴すれば、
どう捻出しようかと考えあぐねていた電気代の口座引き落としに間に合うのだ。
けれども、なんで今なのよ、と香は涙目で唇を尖らせた。
それとは対照的に撩の方は、別にプールはどうでも良かったし、正直な所。
ミックの厭らしい視線に相棒の無防備な姿を晒すのが嫌だったので、ちょうど良かった。
それにどう考えても、子供じみたプール遊びより何より。
内縁の夫から暴力を振るわれ搾取されているヤクザの情婦からの、依頼の方が緊急を要する。
(男に真っ当になって貰いたい一心から、大掛かりな裏取り引きを撩たちに潰して貰いたいというもの)
プールの予定は明日の昼間で、シャブの闇取引は明後日の未明だ。
それを暴力団のお兄さん方に気付かれぬよう、裏から潰しに掛かるには。
もう今夜からでも準備に掛からねばならない。
大抵、こういう役回りは撩の担当なので、後数時間で撩はまずは情報屋巡りを開始する。





しょうがないなぁ、と言いながら小さく笑った撩は素足だ。
ロールアップにしたチノパンの裾から、裸の踝とアキレス腱が覗く。
香はそんな撩の足元に視線を落として、大人の男の人の足だなと思う。
撩は大人だ。
香が撩に初めて逢った時から、撩は憎らしいくらい大人だった。
白いTシャツから伸びた二の腕の筋肉に、いつも香は圧倒される。
気怠そうに煙草を咥えたまま、この仕事が終わったら海に行こうと言った。
撩はいつも気紛れだから、それが実現するかどうかはまだ解らないけれど。
皆で行くプールより、2人だけで行く海の方が嬉しいに決まっていると、香は思う。
それでもその前に、お仕事が控えている。
きっと、撩なら何事も無く無事にそれを完遂するだろうけれど、やはり危険はつきものだ。
今夜から早速、行動を開始するらしい。





本当にほんとう?

あ?あにが?

海。

ああ。

じゃあ、約束。





そう言って差し出した香の小指に、撩は苦笑しながら ガキかよと言ったけど。
言いながらしっかりと小指を絡めた。


(約束だよ、撩。必ず行こうね、必ず帰って来てね。)


帰って来れない程、遠くへと大切な人が逝ってしまわないように。
願いを込めながら香が小指を差し出した事を、撩は知っているけど知らない事にする。
ホンの数日先の事でも、未来の約束をしてくれる相棒を香は信じている。
少しだけ涼しくなったベランダには、薄青い夜の色が溶け始めていた。
2人の小指が絡んだまま。





[ 2014/07/29 22:56 ] 短いお話 | TB(0) | CM(0)

第7話  新婚夫婦の意見の相違

すみません、わざわざご足労戴いて。



そう言って唐沢妙子は、トレイに乗ったハーブティを撩と香の前に置いた。
カップはロイヤルコペンハーゲンのアンティークだ。
中には赤い液体が注がれている。
ローズヒップのハーブティだというそれを香は、うわぁ綺麗。と言って美味しそうに飲んだ。
撩はそんな香を横目で見ながら、カップには手を付けなかった。
2人が妙子に呼び出されたのは、例の事件現場でもある唐沢邸だ。
妙子はあの事件で病院に運ばれて治療を受け、昨日退院した。
退院したその日に、冴羽商事へと依頼の電話を寄越したのだ。



お加減は如何です? もう大丈夫なんですか?



香はまず一番に、妙子の体調を心配そうに訊ねた。
香はこういう言葉を社交辞令で掛けるタイプでは無いので、それはつまり。
本気で心配しているという事だ。
妙子は病院に運ばれて2日後、意識を戻した。
その後、医師が面会が可能だと判断した段階で、警察から事情を聴かれた。
その時に初めて、妙子は野村と桜井の事を聞かされた。



えぇ、もう大丈夫です。・・でも、まさかあんな事になってたなんて知らなかったから・・・



そう言って妙子は表情を曇らせると、言葉を詰まらせた。
妙子の夫の真一は、事件が起こって以来、オフィスのある麻布の近くのホテルに寝泊まりしているらしい。
警察はあの時に、この家で事件に関連のありそうな物は全て押収したらしい。
もっともその頃、妙子は病室に軟禁状態だった。



野村さんは・・主人の仕事の面だけでなく、・・・色々と頼りにして・・いましたから
し、栞さんは・・・・・大事なお友達だったから・・悲しいとか残念とかそういう
簡単なこ、・・・言葉ではっっ



そこまで一息に話すと、妙子は小さな声でごめんなさいと呟いて、大粒の涙を流した。
撩は思わず反射的に、香を窺った。
案の定、今にも泣きそうになっているけれど、必死に堪えていた。
堪えながら、回りを見渡してティッシュボックスを見付けて妙子に手渡した。
またしてもごめんなさいと謝る妙子に、まるで気にするなとでも言う様に背中を擦りながら頷いた。



それじゃあ、今回のご依頼は、この事件の真相を解明するという事でよろしいですか?



香が訊ねると、妙子はコクリと頷いた。
やはり、妙子から電話が掛かって来た時から予測していた通り、
今回の妙子からの依頼は、妙子自身の身の潔白の証明と真犯人の究明である。
正直、撩は全然乗り気では無いけれど、香は請ける事に決めているらしい。
暫く妙子の様子が落ち着くのを待って、撩は気になっている事を訊いた。




事件以来、ご主人とは?お会いになられたんですか?

いいえ、実はまだ。
病院に居る間は、警察の方もずっと居られましたし大変な騒ぎになっているから・・・来ない方がって。

じゃあ、面会には来られなかったんですね?

えぇ、幸い身の回りの最低限の事はアシスタントの子が、色々と気を回してやってくれて。

連絡は?

電話で、何度か。

でも、もう奥さんも退院して戻られたのに、ココに帰って来ないのもおかしいですよね?






撩の質問に、妙子は苦笑する。
眉根を寄せて、俯いた。




あの人は、仕事が大事な人だから・・・


小さく呟いた自分の言葉に、
妙子は無理やり明るい雰囲気を取って付けたように微笑みながら補足する。



あ、彼の事業は何よりクリーンなイメージが大切なので。
今回の件で、マスコミの報道では酷い言われ様でしたから。
私達2人だけの問題では無いんです、会社のスタッフへも責任を負ってる立場ですし。






撩は妙子の言葉に耳を傾けながらも、本当にそれだけだろうかと考える。
もしもそれが自分で、数日もの間入院している妻に逢えない状況になったら。
取敢えずは、仕事など後回しにして一番に顔を合わせるのが当然では無いのだろうかと思う。
撩は目の前に置かれた華奢なカップの中の赤い液体を眺める。
昨夜の寝室での事を思い出す。
初めは仄白い香の肌は、撩に抱かれながら上気して少しづつ桃色に染まる。
頬も膝の裏も首筋も。
それは香に、赤い血が通っている証だ。
もしも、麻布のビジネスホテルとやらが、不倫相手のマンションだったとしたら。
それはこの事件に、何を示唆するのだろう。



撩がそこまで考えた所で、話しを遮るようにドアベルが響いた。
小さく断って妙子が玄関へと出て行ったのを見計らって、香は撩の脇腹を肘で小突いた。
しかし非難がましいその言葉は、あくまで小声だ。




ちょっと、りょおたんっっ

ん?どうした?

どうして飲まないの?冷めてるじゃん。失礼だよ、折角淹れて下さったのに。




撩は香のその問いに、
意地悪そうな笑みを浮かべて香の耳元で囁いた。




・・・どうする? 毒が盛られてたら。

なっっ!?   なんて事言うのっっ

解んないよ? カオリン、どうする?またお腹痛くなったら。





香が撩の脇腹を思いっきり抓る。
ホンのジョークのつもりだったが、思いの外香の機嫌を損ねてしまったので。
撩は慌てて、言い訳した。


いたた、冗談だって。ホラ、俺あんまハーブティって柄じゃねぇだろ?苦手なんだよ。

//////。




香が唇を尖らせて、そっぽを向いた所で妙子が戻って来た。
しかし、陽当たりの良いリビングに顔を出したのは、彼女1人では無かった。





何やってんだ?お前ら、毎度毎度。



夏物の薄いグレイのスーツを着た、眼鏡の刑事。
槇村秀幸である。



















だいたい、りょおたんは。始めっから疑ってたでしょ?妙子先生の事。





パジャマを着た香は、ベッドの上で胡坐をかいて腕組みしたまま膨れている。
いつもは一緒に入るバスタイムも、今夜は断固、拒否されてしまった。




ん~~~、んなこと無いよぉ。俺は至ってニュートラル、今の状況じゃ疑うも何もまだ何にも解って無いし。


撩はそう言いながら、香のパジャマに包まれた太腿に頬を寄せると、細い腰に腕を回した。
可愛い嫁は、夕方家に戻って以来ご機嫌ナナメだ。
依頼人との打ち合わせの席に突如現れた兄は、刑事の顔で唐沢妙子に任意同行を求めた。
あの家の台所から押収された瓶詰のハーブ類の中に、洒落にならない奴が出て来たらしい。






ジギタリス????


香は初めて聞くその植物の名前に、ポカンとして首を傾げた。
撩はその名前を聞いた途端、眉間に深い皺を刻んだ。
その場の全員の顔を窺いながら、秀幸は香にゆっくりと説明した。
それは秀幸の、撩と妙子に関しては説明しなくても解っているだろうという態度の現れでもあった。
ジギタリスとは多年草の植物で、全草に猛毒を有する。
初夏から夏にかけて花を咲かせる。
古代より薬草として栽培されてきたけれど、現代医学では化学合成で同等の薬品が作られるため、
主な栽培目的は、観賞用だ。
薬効としては主に、心臓の疾患への強心効果。
しかし猛毒なので、素人が扱える代物では無い。
恐らくは、妙子の心臓発作の要因はこれにある。
しかし、亡くなった2人から検出された毒物はまた違うものらしい。
今のところ、特定には至っていないが解剖の結果は青酸系の毒物による所見が多く見られている。
しかしそうなってくると、苦しみ始めるまでの時間の掛かり方に齟齬が生ずる。
現場に残された食器や食べ物に、それらしいものは検出されなかった。

けれど、今のところ。
あの家の台所の中の物に関して、妙子以外にその詳細を知る者はいないのだ。
重要な物的証拠が出て来たからには、警察としては彼女に出頭を求めるより他、手立ては無い。









しばらくお兄ちゃんは、出入り禁止にする。



香の不機嫌の矛先は、秀幸にも向かっている。
撩は思わず同情の苦笑いを漏らす。
槇村秀幸にとって、忙しい毎日の中の唯一の潤いと言っても過言では無い妹との食事の機会は。
当の妹の匙加減で、どうとでもなる。
今やその存続はまるで、風前の灯火である。



あ~あ~、槇ちゃん可哀相。

だってっっ!!妙子先生の事、連れて行っちゃうなんてっっ 彼女だって酷い目に遭ったのに。

でもなぁ、別に命に別条があった訳じゃないしなぁ。

・・・・・・・何が言いたいの? りょおたん?

良くある話ではあるよね、
真犯人が己を捜査の目から逸らす為に自分自身も軽く被害に遭った振りするってのは。




バフッッ
羽毛の詰まった枕で、香の太腿に摺り寄せていた頭部を撩は思い切り殴られた。




やっぱ、疑ってんじゃんっっ!!今日はお預けっっ




香はそう言い残すと、腰に回された撩の腕を解いて、
枕とブランケットを抱えると寝室を出て行ってしまった。
恐らく今夜、香は6階の客間で寝るつもりなのだろう。

新婚夫婦がたとえどんなに仲睦まじくとも、時には意見の相違が生ずる場合もある。
したがって、毎晩の日課が疎かになる夜もあったりもするのだ。





あ~あ~、俺 可哀相(くすん)


私立探偵の虚しいボヤキが、ぽつんと寝室に響いた。



(つづく)



[ 2014/07/31 22:39 ] 夫婦探偵社「不実」 | TB(0) | CM(0)