彼女がそう言うのなら・・・

30000Hits Req. Vol.7 ケシ meets こちゃまま



皆様、おはこんばんちわ。
忘れた頃にやって来る、参萬打リク企画でございます。
今宵は、こちゃまま様よりのリクエスト。
原作設定な2人でございます。






















夏も真っ盛りの昼下がり。
太陽はちょうど最も高い位置に居座り、容赦無くコンクリートジャングルを照り付ける。





白く無機質なコンクリートと、たっぷりと熱を吸収するアスファルトは、
太陽からの熱エネルギーをそっくりそのまま、照り返すから、
香は駅までの往復だけで、もう既に汗だくだ。
駅からアパートに帰るまでの途中に、喫茶キャッツ・アイは存在するから、
ついつい、香の足はそのガラスのドアの前で止まる。
いずれにしても、真っ直ぐウチに帰った所で、冷房装置は扇風機なのだ。
コーヒー1杯の値段で、ついでに涼もうというのが冴羽家家訓(節約モード)である。


因みに、余談ではあるが。
冴羽家家訓には、この他にも幾つかあって。
その代表例は。
“心が震えた時に、依頼を請ける(お仕事モード)”というモノがある。
そもそも、この言葉を言い出した当の張本人は、香の口からこの言葉を聞かされる度に、
とんだ羞恥プレイに晒されているワケだが、何しろ、香が気に入っているので、
罰ゲーム宜しく、この言葉を聞かされ続けて早数年が経つ。
どうやら今更、家訓の変更は効かないらしい。












カウベルを鳴らしながら、香が店内に入ると。
香と同じ事を考える似たモノ同士の相方が、カウンターのいつもの席に座っていた。
そしてスツールを1つ空けて、隣には向かいに住む金髪男も一緒だ。
2人とも、真夏だと言うのに涼しい顔をして、ジャケットは欠かさない。
彼らの場合。
そう簡単には、クールビズというワケにもいかないらしい。
美樹が、香さんいらっしゃい、という以前に、
数m先から、香の気配に感づいていた男達は、最愛の女の登場に思い思いのリアクションをとる。


僚は何も言わなくても、
彼女が自分の隣(ミックとは反対側だ)に当然座るものだと思っているから、
少し余裕ぶって、チラリといかにも興味無さ気に視線をくれる。
(本当は、興味アリアリだ。)
片や、ミック・エンジェルは、初恋の君の登場に俄かにテンションが上がる。
なんだかんだとお愛想を言いながら、カップを片手に席を移動する。
勿論、香の隣(僚とは反対側だ)に移動する為である。
結局はいつも、こうして香を挟んで男達は無駄な攻防を繰り広げる。

そして、そのしょうも無い一部始終を、苦笑しながらカウンターの中から傍観するのが、
伊集院夫妻の、ある意味では仕事の一部である。








今日の香は、麻のたっぷりとしたフレアパンツに、白いコットンのタンクトップを着ている。
いつもと、何となく雰囲気が違うのは。
極薄手のガーゼのストールを、首筋に巻き付けているせいか。
柔らかなムラ染めの、黄緑色のような水色のような淡い色彩が涼し気だけど。

けれど、流石に。
そんなにシッカリと巻き付けたら、暑いんじゃないかと美樹は思ってしまう。





珍しいわね、それ。





カウンター越しに、ミックと楽し気に言葉を交わす香に美樹はコーヒーを出しながら、
自分自身の首元を指差す。
それが何を意味するのかは、一目瞭然で。
それというのは、香の首に巻かれたストールの事である。



一瞬、香の目が泳いだのを見逃すようなメンツでは無い。










あ、あぁぁ~~~。これ?これねぇ、ほら、あれよ。





香は、そこまで言い掛けて、ひと口コーヒーを啜って唇を湿らす。
それはまるで。
これからの言い訳を述べるにあたっての、準備動作に見えなくも無い。






日差しが強いし、首筋が焼けちゃったらやだからさ。




えへへと笑いながらそう言った香は、しかし。
日焼けもなんのその、至極布地面積の小さなタイトなタンクトップを身に着けており。
その華奢で真っ直で滑らかな二の腕はこの夏、普段の香の肌色よりワントーン暗めだ。
それなのに、首筋だけをガードするなんて。
今更感は否めない。
ちっとも説得力の無い言い訳を必死に並べる香の、
鮮やかなターコイズブルーのミュールの踵がカウンターの下で、
その本当の理由を知っている男の爪先に、グリグリとめり込んでいた事は誰も知らない。
僚は痛みを堪える為に、無言でマグカップに口を付ける。



何となく薄っすらとは、香の“隠し事”の見当がつく彼らだけれど。
それ以上、深くは追及しないでおいた。
香の恥らう姿を観賞して喜ぶのは、彼らの共通する趣味の1つだけど。
それは危険とも紙一重であり、ある一定の水準を超えた香の羞恥心は、
恥らいハンマーという名の凶器に成り代わって、甚大な被害を齎すのは周知の事実だ。


しかしその遣り取りは、この日の槇村香にとって。ホンの序章に過ぎなかった。















「・・・20円のお返しです。いつも、ありがとうございます。」



美樹がそう言ってニッコリと笑いながら、常連客の初老の男性に釣銭を渡す。
いつも、僚と香や、ミック達しか居ないかのように暇な店ではあるけれど。
それでも一応は、赤字が出ない程度には常連客もいる。
その男性には、香も僚も見覚えがある。
彼が店を出ようとした時に、財布を仕舞ったポケットから何かがひらりと落ちた。
本人が気が付く一歩手前で、香が気が付いた。
そしてこれが、この日の彼女の運の尽きだった。
それは、電車に乗る為のICカードの入ったパスケースだった。





あ、落としましたよ。




香は素早くスツールから降りると、屈んでそのパスケースを拾い上げる。
ドアを開ける寸前だった彼は、非常に感謝しながら店を出た。
ココまでは、何の変哲も無いいつもの光景で。
香は元の通り、席に着いてコーヒーを飲もうとマグカップを持ち上げた。
そして、違和感を感じたのはその時だった。



全員の視線が己に集中している。
否、全員というのには些か語弊がある。
1人、僚だけは。
白々しく明後日の方向を向いて、殆ど無くなりかけたコーヒーを啜っている(フリをしている)。






?????




香はその視線の原因を、色々と考えて首を傾げた。
ちょうどその時、エアコンの送風が香の襟元を擽った。




//////////。




巻き付けていた筈のストールは、いつの間にか解け。
香が今朝洗面所で発見した時からずっと、隠し続けたそれが。
努力の甲斐も虚しく、しっかりと全員の知る所となった。



この時の事をミックは後に、こう振り返った。


『カオリのさぁ、真っ白な肌が下の方から順々に真っ赤になっていったんだ。
 それはもう、手に取るように解る変化だったさ。
 カオリほど、嘘の吐けない子は居ないね♪
 まぁ、そういう素直な所全てをひっくるめて、キュートなんだけどね』(ミック談)













・・・虫刺されなの。




香は、しっかりと首筋を手で押さえながら、蚊の鳴くような声でそう言った。
目の縁には、飽和一歩手前の涙が溜まっている。
この期に及んで、言い訳をする必要があるのかと、
僚は内心、自分の所業も棚に上げて、少しだけムッとした。
しかしここで、それを口に出してしまっては、
確実に地獄を見る事だけは予測出来るので、敢えて口は噤む。
美樹は、そんな香がいたたまれなくなってきた。
別に恥ずかしい事じゃないのよ、と言おうとしたのだ。




香さん・・・




しかし香は、目に涙を溜めたままフルフルと被りを振ると、美樹の呼び掛けを遮った。
もうそろそろ、行きつけのスーパーマーケットのタイムセールの時間だ。
香はガタンと派手な音を立てて、スツールから立ち上がると、
もう一度、しっかりとガーゼのストールを巻き直した。




えぇぇぇ~~~っと、お買い物に行かなきゃだった/////





そう言いながら、店を出て行こうとした香は、
ガラスのドアの手前で振り返ると、もう一度繰り返した。







これ、虫刺されなの。




それはやけに力強く、キッパリとした口調だった。
それ以上、その場の全員が何と口を挟めただろう。
そっとしておく以外の選択肢は、無い。

















彼女が去った後のカウベルが、涼やかに鳴る店内で。
裏稼業の彼らが、ヒッソリと呟いた。







ま、まぁ、香さんがそう言うのなら、そうなんでしょ。


ぐふふ、あんなに恥ずかしがっちゃって、かぁいいなぁカオリってば


フンッ、ある意味では、虫刺されには間違いないな。









何となく居心地の悪いカウンターで小さくなって、
“虫刺され”の原因たる、モッコリ虫が小さく1つ咳払いをした。
この日の夜から、数週間。
彼がオアズケを喰らったのは言うまでもない。

















え~~と、こちゃまま様のリクエストは。

原作設定の2人で、両想いになった後、キスマークでひと騒動。

というモノでした(笑)
何だか、カオリンが1人羞恥プレイかと思いきや。
なかなかどうして、リョウちゃんも結構な羞恥プレイだと思います。
こんな感じでどうでしょうかぁぁぁ~~?こちゃまま様ぁ~~~(汗)
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